婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
大使館は王宮のすぐ近くに建っていて、周囲には他国の大使館もずらりと並んでいた。
貴族の相手は同じく貴族……ということで、わたしも他国の貴族たちとの会食などに駆り出されているけど、肝心のレイモンド王太子殿下には未だ挨拶さえできていない。何度か面会の要請をしたのだけど、多忙を理由にいつも断られていた。
王太子の側近であるフランソワ・ルーセル公爵令息様には他国の貴族の伝でなんとかお会いできたのだけど、「王太子殿下は国王陛下からの政務の引き継ぎが多く、予定が詰まっております」と一点張りで、取り付く島もなかった。