婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
アンドレイ様は酷く悔しそうな表情で押し黙った。貴族たちの視線は王子に向かっていた。軽蔑の入り混じった胡乱な目線が突き刺すように彼を囲む。
初めての不名誉な注目に耐えきれずにギリギリと歯噛みしながら、彼はわたしたちをひたすら睨め付けていた。
あら、用意したシナリオ通りにならなくて残念だったわね。詰めが甘いのよ。
きっと、わたしなんて簡単に嵌められるって思っていたのでしょう。もう昔のオディールではないわ。彼が間抜けで良かった。
――さて、こちらも反撃といきますか。
わたしは謝罪の意を込めた申し訳なさそうな顔をして、隣に立つ王太子殿下を見た。
それを合図かのようにレイが口火を切る。
「戦争と言えば、貴国では意図的に我が国と開戦しようと画策している者がいるな?」