婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

「えぇっと…………、愛するアンドレイ。昨日はとっても良かったわ。侯爵令嬢に見つからないように近くでするのは最高ね。口で受け止め切れなかったときは焦っちゃったわよ。それでも、あの子はお馬鹿だから全然気付かなくて、本当に可笑しかったわね。あなたの言う通り、次はあの子の側で◇◇◇しても大丈夫そうね。スリリングでとっても楽しそうだわ。あんな間抜けで面白味のない子と早く婚約破棄が出来るといいわね。心から愛しているわ。……あなたの虜のシモーヌ」

「………………」

「………………」

「………………」

 底冷えするような静寂がホール中を押し潰すように包み込んだ。

 その高貴な身分にそぐわない卑猥な内容に誰もが驚愕し、呆れ返り、軽蔑、嫌悪、失望……どす黒い負の感情を王子と子爵令嬢に突き刺すように注いでいる。

 非難の中心のアンドレイ様は真っ白な顔をして茫然自失と立ち尽くしていた。
 子爵令嬢のほうはもじもじしながら頬を赤く染めて、なんだか興奮しているような……ちょっと嬉しそう? え……なに、この人。変態なのかしら。彼女の感覚がよく分からないわ。
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