婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「困ったわね……」
わたしは今日もため息をつく。憂鬱感が全身に襲いかかって鉛のように重かった。
アンドレイ様には定期的に任務の進捗状況を報告をしなければいけないことになっている。
それが毎回どこそこの貴族とお茶会をした~とか、ローラント国の王都の市場調査をした~とかだけじゃ、さすがに呆れられちゃうわよね。
「困ったわ……」
またぞろ深くため息をついた。
ローラント王国に来てから肝心のアンドレイ様からの任務が全くと言っていいほどに進んでいない。
その間にも王太子は着々と戦争の準備をしているかもしれないし、アングラレス王国でわたしの王妃としての素質の有無を話し合っているかもしれない。
わたしには、時間がない。
なんとか今の足踏み状態を打破しなければ……。