婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
王子の醜い断末魔の叫びが響き渡る。国王陛下は再び無表情になり、貴族たちは王子の馬鹿の極みような開き直りに慄いた。
レイが眉を吊り上げてアンドレイ様になにか言おうとしたが、目配せをして制止する。彼は不服そうにこちらを見ていたが、わたしは頑なに首を横に振った。
ここは、自分自身が決着をつけないといけない場面だから。
とは言え……思い通りに事が運んで、わたしはほくそ笑んだ。断罪まであと一押しだ。
ついに本性を表したわね。ここには国中の貴族が集まっている。彼に立太子をする資格があるか今一度問われることでしょう。
……まぁ、そんな機会も与えないけどね。
「――それで」わたしの冷たい声音が静かに響いた。「侯爵令嬢と違うそこのつまらなくない子爵令嬢と楽しむ遊びは、一緒に犯罪を行うこと? それが殿下のつまらなくないことなのですか?」
「……あ?」
「持って来なさい」
わたしが合図をすると、王宮の侍従たちがぞろぞろと会場内に入って来た。どの者も手には荷物を掲げている。
それは、アンドレイ様が違法で入手した数々の美術品だった。