婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
わたしは静かに目を開く。
ギラギラと人工的な鮮やかさが構築されたパーティー会場に、目覚めたばかりの深い森のような澄み切った空気が流れ始める。それは風となって、わたしの背中をそっと押した。
言葉を紡いだ。
決別の言葉を。
「シモーヌ・ナージャ子爵令嬢との不貞、隣国への侵略計画、公文書の不正、更には美術品の違法購入…………、わたし、このような重罪人と婚姻なんて出来ませんわ!」
わたしはすっと手を伸ばして、人差し指をアンドレイ王子に向けた。
まっすぐに、彼へ。
そして、決意の込められた強い声音で叫ぶ。
「アンドレイ・アングラレス王子……あなたとは、婚約破棄よっ!!」