婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「ねぇ、ヴェル。わたしはどうすればいいと思う?」
わたしはベッドに横になりながら、気持ち良さそうにお腹の上に寝転んである彼に尋ねた。
「オディール・ジャニーヌ ハ コウシャクレイジョウ ソレダケガトリエサ」
「そうね。わたしは侯爵令嬢…………そうだわっ!」
ガバリと勢いよく起き上がる。ヴェルが驚いてバサリと飛び立ち、遠くから鶏冠と翼を広げて威嚇してきた。
「あら、ごめんなさい。驚いちゃったわね」
「ピャー!」
ヴェルは再び飛び立ってわたしの頭上を二、三度旋回してから左肩に止まって、ツンツンと頭をつついてきた。
「オディール オディール」
「もうっ、ごめんって」
「オディール・ジャニーヌ ハ コウシャクレイジョウ ソレダケガトリエサ」
「それなのよ!」わたしはポンと彼の頭に手を置く。「わたしが侯爵令嬢じゃなくなればいいのよ!」
「コウシャクレイジョウ?」と、ヴェルがくるっと首を傾げた。
わたしはニッと口の端を上げて、
「潜入捜査よ!」