婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


 そしてわたしは、ローラント王国の三大公爵家の一つであるクノー家の養子に入ることになった。
 これからは公爵家の令嬢として、ローラント王国で暮らすことになる。レイと話し合って決めたのだ。

 彼が「オディール嬢は王子と婚約破棄となったことで、これは大変不名誉な事実となって一生彼女の足枷となる。だからジャニーヌ家の令嬢として、もうこの国にはいられないだろう。家門にも不利益を被る可能性がある」などど、もっともらしいことをのたまって、特にトラブルもなく円満に侯爵家から籍を抜くことができた。

 両親はなによりも外聞が大事なので、喜んでわたしを放り出したわ。
 ジャニーヌ家には嫡男であるわたしの弟がいるので、王子と婚約破棄となった不出来な娘なんて特に必要ないことでしょう。

 もう、寂しいなんて優しい気持ちは微塵も起きなかった。


 わたしは家族とは……決別を選択した。
 もう二度と彼らと会うこともないし、アングラレス王国へ行くこともないだろう。


 今、わたしはレイモンド王太子殿下の馬車で、彼と一緒にローラント王国へ戻っている。



 なぜなら――……、



< 300 / 303 >

この作品をシェア

pagetop