婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

 本来ならアンドレイ様のおっしゃる通りに王太子から直接話を引き出せたらいいのだろうけど、残念ながら就任の挨拶でさえままならない状態だ。
 このままでは埒が明かないので、わたしは自らの足で動くことにしたのだ。

 オディール・ジャニーヌ侯爵令嬢ではなく、平民の少年坑夫・オディオとして。

 この話を提案したら、スカイヨン伯爵は最初は「侯爵令嬢が鉱山労働だなんて危険すぎる」って難色を示したけど、ここは伝家の宝刀「王子殿下のご指示です」で押し通して渋々承諾させたわ。
 王子殿下から「王妃になったら諜報員たちに具体的な指示ができるように実際に自身で潜入捜査を体験せよ」と言い付かっている、って。

 アンドレイ様のお名前を勝手に使うのはちょっと後ろめたい気分になったけど……でも、わたしに残されている時間は少ない。
 だから申し訳ないと思いつつも、王子の威光を利用させていただいたわ。

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