婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜


「……よし。これはどこからどう見ても平民の少年ね」

 わたしは鏡の前に立って最終チェックをする。スカイヨン先生から教えてもらった変装術の発揮だ。
 ボサボサのくすんだ明るい茶色の髪にツギハギだらけの粗末な服装、そしてところどころ煤で汚れた肌……。

 思わず口元が緩んだ。ふふっ、完璧だわ。この姿だと誰もがわたしが侯爵令嬢だなんて思いも寄らないでしょう。ましてや王子の婚約者だなんて。

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