婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「はぁ~~~………………」
フランソワは長いため息をついた。
このご主人様はいつもそうだ。巷では柔軟で物わかりの良い王太子なんて言われているけど、やはり王族。一度言い出したら聞かない我ま――頑固なところがあるのだ。
主人の気まぐれに何度付き合わされて、その度に尻拭いをさせられたことか……。
そのとき、フランソワはあることに気が付いた。そしてニヤニヤと意地の悪い笑顔を浮かべる。
「な、なんだよ」と、レイモンドは彼を訝しむ。
「いやいや、お前……令嬢とは関わりたくないんじゃなかったっけ? もしかしてジャニーヌ侯爵令嬢に興味持っちゃった~? 鉱山に潜入するような変な令嬢だから気になるのか? 王太子殿下は単純だねぇ~」
「ちっ……」レイモンドの顔がにわかに上気する。「違う! 僕はただ、侯爵令嬢が王子から不当な目に合っているんじゃないかって心配なだけだ! それに、鉱山内でもしものことがあったら、我が国の責任になるかもしれないだろう? だから……監視に行くんだよ!」