婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「お~い、オディオ! 休憩終わったぞ!」
「早く持ち場につかねぇとまたどやされるぞ!」
「あ、は~い! 今行きます!」
わたしは鶴嘴を掴んで慌てて駆け出した。
と、そのとき、
「わっ!」
足元に転がっていた拳大くらいの石に躓いて、倒れ――、
バシッ、と大きな腕に胴体を掴まれた。
危機一髪。ほっとして顔を上げると、一人の青年がくすりと笑ってわたしを見ていた。
「大丈夫?」