婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
8 ダイヤモンド鉱山② 〜変な新入りがやって来た〜
「大丈夫?」
その青年はわたしの身体をひょいと軽く持ち上げてから、ゆっくりと地面に下ろした。
わたしは彼の顔にじっと見入る。不思議な雰囲気の持ち主だった。
濡れた鴉の羽ような漆黒の髪に、煉獄の底みたいに燃え盛る紅い瞳。その相貌がアンドレイ様とあまりに対照的で、思わず少しのあいだ見つめてしまった。
「どうした?」彼は首を傾げる。「怪我はないと思うが……」
わたしははっと我に返って、
「だっ、大丈夫だ。助けてくれてありがとう」
慌てて彼に頭を下げた。
「そうか。じゃ、行こうか」
彼は落ちていたわたしの鶴嘴を拾い上げて坑夫たちの待つ持ち場へと向かう。
わたしは慌てて彼を追いかけた。そしてパッと鶴嘴を受け取って、彼と並んで一心不乱に岩を掘る。周りに迷惑を掛けられないから、早く今日のノルマを達成しないと……。
その青年はわたしの身体をひょいと軽く持ち上げてから、ゆっくりと地面に下ろした。
わたしは彼の顔にじっと見入る。不思議な雰囲気の持ち主だった。
濡れた鴉の羽ような漆黒の髪に、煉獄の底みたいに燃え盛る紅い瞳。その相貌がアンドレイ様とあまりに対照的で、思わず少しのあいだ見つめてしまった。
「どうした?」彼は首を傾げる。「怪我はないと思うが……」
わたしははっと我に返って、
「だっ、大丈夫だ。助けてくれてありがとう」
慌てて彼に頭を下げた。
「そうか。じゃ、行こうか」
彼は落ちていたわたしの鶴嘴を拾い上げて坑夫たちの待つ持ち場へと向かう。
わたしは慌てて彼を追いかけた。そしてパッと鶴嘴を受け取って、彼と並んで一心不乱に岩を掘る。周りに迷惑を掛けられないから、早く今日のノルマを達成しないと……。