婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
そう言えば、アンドレイ様のことをこんな風に褒めている方々を見たことは…………、
――と、ふと頭の中にぼんやりと思い浮かべてから、わたしはブンブンと顔を左右に振った。
いけないわ、なにを無礼なことを考えているのかしら。
アングラレス王国にいたときは平民と関わることなんて皆無だったし、貴族たちもアンドレイ様の婚約者であるわたしの前で王子の批評なんて怖くてできないわよね。
だから、アンドレイ様に関するレイモンド王太子殿下みたいな素敵なお話をわたしが耳にする機会なんてないはず。これは仕方のないことなのよ。
だって、いつも隣にいる婚約者のわたしが彼の素晴らしさを一番よく知っているもの。