婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
気が付くと、レイが興味深そうにわたしの横顔をじっと見つめていた。同時にわたしの高揚した気分がだだ下がりで、渋面を作る。
「いつも他の坑夫たちと一緒に食べているのか? 同じものを?」
「当たり前だろう? なに言ってるんだ」
わたしは首を傾げる。ここで働いているんだから、仲間たちと一緒に食事を取るのは当然じゃないの。
「いや……」彼は顎に手を当ててしばし黙り込んでから「君は同年代の少年たちより小柄だから、もっと食べたほうがいいと思って」
「チビで悪かったなっ!」
とうとう堪忍袋の緒が切れて、わたしは吸い込むように勢いよくスープとパンを口の中に入れて、ガタリと乱暴に立ち上がり、食堂をあとにした。
どすどすと怒りの音を撒き散らしながら、自室へ向かう。
本当に……なんなのよ、あの人はっ!
今朝からずっと人のことを小馬鹿にしてきて、なんて無礼な人!
もうっ、信じられない!!