婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
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「オディールがローラントのダイヤモンド鉱山に潜入したそうだ」
アングラレス王国の王子アンドレイは喜々として恋人のシモーヌ・ナージャ子爵令嬢に報告した。
「え? 本当に侯爵令嬢が鉱山に?」シモーヌは目を見張る。「信じられないわ」
アンドレイはくつくつと笑って、
「あの女は俺に飼い慣らされているからな。命令をすればなんでもやるんだよ。馬鹿な女だろ?」
「うわぁー、最低な王子ね」と、シモーヌはアンドレイを非難しつつも可笑しそうにくすくすと笑っていた。
「利用できるものは最大限に使わないとな。――もうすぐ、君にダイヤモンドをプレゼントできる。楽しみに待っていてくれ」
「あたし、帝国のロイヤルクリスタルより大きなダイヤが欲しいわ」
「勿論だよ」アンドレイは背後からシモーヌを抱きしめた。「君に世界で一番輝くダイヤを捧げるよ」
「まぁっ、お上手」
二人は軽くキスをする。
「そうだ、以前君が言っていたダイヤの粒の湯浴みもしようか」
「素敵だわ、アンドレイ」
キスが深くなった。
「あの女は使えるだけ使って、最後の一滴まで搾り取らないとな」と、アンドレイは邪悪な笑みを浮かべた。
「最低な王子様ね」とシモーヌ。
「君のためなら悪魔にでもなるさ」
アンドレイは灯りを消して、最愛の恋人をベッドに横たえる。