婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「ふぅ、今夜はこの辺にしておこうかしら」
地図作りは順調そのものだった。山の麓から始めて、そろそろ三合目に差し掛かろうとするところだ。
坑道や隠し部屋はもちろん、ローラント王国が使用している道具や技術力の情報も少しだけ手に入ったわ。
あとは地質や産出量などの具体的な数値が分かる資料が入手できたらいいんだけど……こればかりは難しいのよね。ガブリエラさんに管理人の部屋に侵入できないか探ってもらっているんだけど、どんなに色仕掛けをしても駄目みたい。
さて……、
わたしは自室へ戻ろうと踵を返した。
最近はまた疲労が蓄積しているみたいで、今晩はゆっくり休みたい。ガブリエラさんからも昼の仕事に支障が出たら元も子もないからほどほどにしなさい、と言われている。
わたしには時間がないので短期決戦でいきたかったけど、身体が壊れたらどうしようもないものね。