婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

 ――それもこれも、最近来た新入りのレイのせいだ。

 彼とは歳が近いからか執拗にわたしに付き纏ってきて、やたらめったら話し掛けてくるし、うるさいし、しつこいし……わたしは神経の先まで疲れ切っていたのだ。
 もう彼の一言一言がわたしを苛つかせて来るのよね……。あれは絶対にわざとからかっているんだわ。
 本当に腹が立つ!

 あぁっ、彼の顔を思い出しただけでまた怒りが込み上げてきた。鬱憤が自身の足に伝わって、発散するように強く地面を踏みながら歩く。

 早く帰って眠って忘れよう――、

「おっと、危ない」

「えっ!?」
< 69 / 303 >

この作品をシェア

pagetop