婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
――それもこれも、最近来た新入りのレイのせいだ。
彼とは歳が近いからか執拗にわたしに付き纏ってきて、やたらめったら話し掛けてくるし、うるさいし、しつこいし……わたしは神経の先まで疲れ切っていたのだ。
もう彼の一言一言がわたしを苛つかせて来るのよね……。あれは絶対にわざとからかっているんだわ。
本当に腹が立つ!
あぁっ、彼の顔を思い出しただけでまた怒りが込み上げてきた。鬱憤が自身の足に伝わって、発散するように強く地面を踏みながら歩く。
早く帰って眠って忘れよう――、
「おっと、危ない」
「えっ!?」