婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

 わたしたちの住むアングラレス王国と隣国――ローラント王国は友好国とまではいかないが、外交上は問題なくお付き合いをしている。お隣だけあって民間でも交流が盛んだ。
 わたし自身も宰相の娘としてローラント王国の大使館の方々と晩餐をともにしたこともあるし、特に二国間に戦争の火種となるような問題を抱えているわけじゃないし……どうして?

「お前が困惑するのも分かる。俺だって最初は信じられなかったからな。だが、残念だが確かな情報筋からの提供だ。王太子が侵略戦争を仕掛けてくる可能性は、すこぶる高い」

「そんな……」

「だから、お前に秘密裏に探って欲しいのだ。そして可能ならば戦争を止める糸口を掴んで欲しい」アンドレイ様は立ち上がってわたしの肩に手を置いた。「我々の大切な民が犠牲になったら困るからな」

 わたしは頬を染めて、ゆっくりと頷いた。
 アンドレイ様は真面目で優しい方で、いつも民草のことを一番に考えている素晴らしい方なのだ。
 そんな方の伴侶になれるなんて、とても誇らしい。
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