婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「……オマエの想像通りだよ。鉱山の地図を作っているんだ。悪いかよ」
レイはちょっと目を見開いて、
「へぇ。勉強熱心なんだな」
「ほぇ?」
予想外の返事に思わず間抜けな声が出てしまった。てっきり咎められるかと思ったのに……もしかして、気付いていない?
となると、上手く話を合わせたら乗り切りそうね。
わたしは努めて明るい声音で、
「そうなんだよ! 実は鉱石や鉱山事業に興味があって、ここを出たら経験を活かして鉱石関連の商会に働き口を求めようと思って」
「そうなのか。それは殊勝なことだな」と、レイはニコリと笑う。
あら、すっかり騙されているみたい。意外に単純なのね。
「そうだよ。だから、後学のためにここの地図を作成しているんだ」
「それは素晴らしい」彼は感心するように頷いてから「――で、これが監視たちに見つかったら君は窮地に陥るわけだ」