婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「はっ……!」
わたしが馬鹿だった。この人、最初からわたしを脅そうとしているのね。なんて性悪なのかしら。
彼はくつくつと笑って、
「どうしようかな~? 今晩のこと、監視に報告しようかなぁ~?」
案の定、わたしを脅迫してきた。
一体なにが目的なの? ただの悪ふざけ?
……でも、そっちがその気なら、こちらにも考えがあるわ。
わたしはフンと鼻で笑って、
「別に密告したければどうぞ。……その代わり、オレもオマエの秘密をばらす」
「えっ……!?」
レイはみるみる真っ青な顔になって硬直した。彼の不安がこもった空気を伝播して、こちらにも伝わってくるようだ。
勝った。やっぱり、あれは露見されてはいけない事実なのね。
わたしはとどめを刺すように、したり顔で言う。
「オマエ……貴族だろう?」