婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜

13 王太子と鳥

◆ ◆ ◆





「ピャーッ!」

「…………」

 レイモンドと鳥――ヴェルは運命を感じた男女のように、しばらくじっと見つめ合う。
 どちらも黙りこくって、しきりにパチパチと瞬きをしていた。

「……なんだ、この派手な鳥は」と、ややあってレイモンドが呟く。

「これは鸚鵡という種類の鳥だな。南方に生息しているらしい。見ての通り、鮮やかな体が特徴だ」

「おっ、足輪がある」

 警戒しながらヴェルの足をじっと見るとそこには――、

「ジャニーヌ侯爵家の紋章だな、これは」

「そうみたいだな。じゃあ、侯爵令嬢の飼っている鳥なのか」

「へぇ。――お前、オディール嬢のところから来たのか?」

 レイモンドが尋ねるとヴェルはくるんと首を傾げてから、

「オディール オディール」と、答えるように言った。

「わっ! 鳥が喋った!!」

 レイモンドは驚きのあまり目を剥いてビクリと仰け反った。
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