婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
ダイヤモンド鉱山で実際にオディールと接した彼は、彼女の取り柄が身分だけだなんて全く思わなかった。
彼女と話をしていると楽しかった。
本人は付け焼き刃だと否定していたが、たしかな深い洞察力を持ち、その言葉の奥にはたくさん勉強をしたのだなと思わせる様子が垣間見られた。
そして二人で話していると無尽蔵に話題が増えていって、飽きるどころかもっと会話を楽しみたいと思った。
それに高位貴族の令嬢だけあって気が利いて、さり気なく配慮をしてくれるような子だった。
地図制作も真剣に取り組んでいて……思わず本気で協力したいと思った。
短期間だけ接触した自身でさえ彼女の長所を知っているのに、彼女の周囲の人間は一体なにを見ているのだろうか。
そして、この言葉から推測される事実――オディールが婚約者のアンドレイ王子をはじめとするアングラレス王国の人間から受けている不遇を想像すると、怒りは収まるどころかぐんぐんと上昇していった。