婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜



「とりあえず……鉱山に関する資料を送って、あとは今後の方針、かしら……?」

 そんな風に考えながらペンを走らせていると、

「ピィーッ!」

 部屋の窓辺からヴェルが騒がしげに入って来た。かなり暴れ回ったようで、体中に葉っぱを引っ付けている。

「もう! どこに行っていたの? こんなに汚して。大使館から出たら駄目だって言っているでしょう?」と叱りながら、わたしは彼の体を綺麗にする。

 ヴェルはわたしと離れ離れになっている間に悪い遊びを覚えたみたいで、今では平然と一人で大使館を飛び出してどこか遠くまで出掛けていた。
 危ないから止めなさいって何度も叱っているのだけれど、従うつもりは全くないらしい。
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