婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜
「オディール オディール」
ヴェルは興奮気味にバタバタと羽を動かして、自慢の鶏冠を威嚇するようにピンと立てていた。
「どうしたの? まだ遊び足りない? でも、今日はもうおしま――」
「オディール・ジャニーヌ ハ マジメデドリョクカ ソレダケガトリエサ」
「そうね……えっ………………?」
わたしは目を見開いて、彼を見る。急にあたりがしんと静まり返って、ざわざわと風で葉が揺れる音だけが鳴っていた。
今、とんでもない言葉を聞いた気がする。
信じられないような、夢でも見ているような……。