婚約破棄寸前の不遇令嬢はスパイとなって隣国に行く〜いつのまにか王太子殿下に愛されていました〜



「オディオ! 遅れているぞ!」

「すっ、すみませんっ……!」

 ぜぃぜぃと息が乱れる。目の前を走っている同僚の兵士たちがどんどん小さくなっていった。

「も……もう駄目」

 わたしは体力の限界が来てバタリとその場に倒れ込んだ。もうこれ以上は動けないわ……。

「こらーっ! オディオ! 休むなぁっ!!」

 頭上から怒声が聞こえた。厳しい鬼教官の声だ。
 わたしは入隊して以来、彼のもとで基礎訓練に従事していた。

「たっ……隊長っ……もっ、もう無理です……」

「馬鹿者! 気合がたりんのだ! さぁっ、立て!」と、隊長はわたしの腕を掴んで持ち上げようとする。

「もう無理ですってばあぁぁぁぁぁっ!!」


 考えなしに軍隊の潜入捜査を決行したわたしが馬鹿だった……。女性と男性ではそもそもの体力が違いすぎる。こんなの、訓練に付いて行くだけでも精一杯……いえ、既にもう付いて行っていないけど…………。

 結局あのあと、自分のペースで構わないから最後までやり遂げるように命令されて、ノロノロと歩くより遅いペースで走り込みを終えたのだった。

 軍隊に潜入して一週間、わたしはもう限界を感じていた……。

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