二人でお酒を飲みたいね。
ドタバタが続いていて、いつの間にか土曜日になってしまった。 俺は珍しく一人でショッピングモールへ出掛けて行った。
ブラブラと歩きながら何気にフードコートを覗いてみる。 やっぱり居た。
「よう。」 気取った振りで手を挙げてみる。
康子も何も言わずに手を挙げた。 (ほんとにソフトクリーム好きだな あいつ。)
結婚していた頃を懐かしく思い出す。 すると康子が近付いてきた。
「今晩さあ、あなたの家に行ってもいい?」 「いいよ。」
「誰も居ないの?」 「俺が居る。」
「それは分かってるの。 他には居ないの?」 「居ないよ。」
「じゃあ、泊ってもいいわね?」 「あ、ああ。」
「なあに? その返事は? ダメならいいのよ。」 「いや、いいよ。」
「ほんとにいいのね?」 慎重に念を押す。
康子もおばさんになったなあ。 ってか、俺もおっさんだ。
二人並んであの日のように椅子に座っている。 コーヒーを飲みながら俺はあの日のように康子の肩を抱いた。
「馴れ馴れしいわねえ。 あ、な、た。」 「いいじゃん。 これくらいは。」
「いいけどさあ、彼女が見てたらどうするのよ?」 「居ないよ この時間は。」
「何で分かるの?」 「友達と旅行に行ってるから。」
「ふーーーん、、、そうなんだ。」 康子は半分呆れたように周りを見回した。
人込みは途切れること無く流れている。 老若男女親子夫婦兄弟姉妹、何もかも押し流すように。
俺たちが子供の頃にはショッピングモールなんて無かった。 デパートがせいぜいだったな。
焼きそばを焼いてるおばちゃんが居て、ジュースを飲みながらその焼きそばを掻き込んだんだ。 美味しかった。
鉄板焼きだったな。 だからかな、美味かったのは。
目の前で焼いてくれるんだよ。 子供の俺には待ち遠しかった。
熱々の焼き立てを皿にポンと放り込んで「あいよ!」って出してくれる。 勢いが有ったなあ。
母さんはその間に買い物を済ませるんだ。 戻ってきたころには食べ終わってる計算だな。
だからさ、昼飯はわざと食べないんだよ。 焼きそばを食べたいから。
買い物客がドッと押し寄せてきた。 大混雑だ。
さすがは土曜日。 俺は康子を見守るように外へ出てきた。
まだまだ太陽は明るい。 康子は屋上に目をやった。
アドバルーンだ。 何かの宣伝に使われているのか、アドバルーンが浮き上がっている。
「今の時代にアドバルーンなんて珍しいわねえ。」 「そうだなあ、、、ネット広告が増えてるのに、、、。」
飛行機らしい絵が描いてある。 何処かの航空会社なのだろうか?
「今晩は他の染みねえ。 久しぶりにあなたと寝れるなんて、、、。」 「そうか? 布団もそのままだからな。」
「あらやだ、、、布団もそのままなの?」 「そうだよ。」
「恥ずかしいなあ、何か。」 康子はハンドバッグの中身を確かめた。
「途中でさあ、コンビニに寄るわ。 下着持ってこなかったから。」 「あいよ。」
久しぶりに康子と二人で家に帰ってきた。 玄関もそのままだ。
「あらあら、この花瓶もそのままに置いてあるのねえ?」 「ずーーーーっと置いてあるけど、、、。」
「こないだは見なかったわよ。」 「お前が気付かなかっただけだよ。」
二人して居間の椅子に腰を下ろす。 なんだか不思議な気分だ。
少し前までそこには尚子が座っていた。 そして河井たちが騒いでいた。
前妻だとはいえ、別れてもう数年。 なぜか緊張してしまう俺である。
「久しぶりねえ。 このテレビも。」 「一応置いてあるんだ。 静かすぎると不気味だからね この部屋。」
「何か出るの?」 「そうだなあ、、、たまには幽霊さんも遊びに来るみたいだよ。」
「えーーーーーーー?」 康子は頓狂な声を上げて俺にしがみついてきた。
「おいおい、、、。」 「私が怖がりなの知ってるでしょう? 意地悪なんだから。」
「だってほんとなんだもん。 しょうがないよ。」 「明るいうちから怖がらせないでよ まったく、、、。」
それでも康子は俺から離れようとしない。 抱っこされたままで胸に顔を埋めている。
(こんな可愛い所も有ったんだな、こいつ。) そう思うと急に愛しくなってきて俺は康子の髪を撫でた。
「結婚してる時もこうしてほしかったなあ。」 「お前がしがみついてこなかっただけだよ。」
「私のせいなの?」 「そうだよ。 可愛がろうニモ「私は強い女です。」って顔してるんだもん。 可愛がれなかったよ。」
「変な言い訳。 彼女のほうがいいんでしょう? 素直に抱かせてくれるしねえ。」 「そりゃねえよ おい。」
「あら、怒っちゃった?」 「う、うん。」
「でもあなたってさあ、本気で怒ったこと無いわよねえ? 優しすぎるのよ。」 「そうかなあ?」
「まあ、あなたみたいな鈍すぎるおじさんには分からないでしょうけど、、、。」 俺から離れた康子は買い物袋を開いた。
チラッと覗いては見たが、中身はどうもさっき買ってきた下着らしいことだけは分かった。
「今夜はこれであなたを夢の世界へ連れて行ってあげるわ。」 何かを企んでいる顔である。
夕食は康子が作ってくれた。 俺は久しぶりに料理を作る康子の後姿を見た。
でも、、、。 ミニスカートから伸びる素足にドキッとしてしまって、、、。
(あの頃よりセクシーになったなあ。) 見惚れていると康子が振り向いた。
「今夜はあなたの物だから好きにしていいのよ。 襲ったって抱いたって構わないわ。」 挑戦的である。
胸元が開いたシャツ、そして見えそうで見えないスカート、、、完全に俺を挑発している。
(まあ、しばらくはやってないんだろうからそれも無理は無いか。) ぼんやりと考えているとまた康子の声が聞こえた。
「今夜はあなたに思いっきり甘えるの。 妻に戻った気分でね。」 「いつでもどうぞ。」
「あらあら、私には強気なのねえ。 彼女さんにはどうしたのかしら? 押されてばっかりだったんでしょう?」 (ギク、、、。)
「私はお見通しなのよ。 付き合ってた頃のあなたは何でも私に合わせてくれたから。) よく見てる。
これじゃあ俺には勝てないな。 兜を脱がされた思いだ。
夕食が出来上がると二人でテーブルを囲む。 テレビは消されている。
静かに静かに時間が流れていく。 なんでこんなに緊張してるんだろう?
あの日、あれだけあっさりと離婚届を書いたのに、、、。 「後は私が何とかするから役所から通知が来るのを待っててね。)
そう言って康子は持てるだけの荷物を持ってこの部屋を出て行った。 その部屋にこうして戻ってきたんだ。
でも寝室には尚子の匂いが残っているだろう。 やつだって嗅覚は鋭いから。
黙ったまま食べていると耐え切れなくなった康子が口を開いた。
「最近、会社のほうはどうなの?」 「どうって?」
「事件が続いたでしょう? やっていけそうなの?」 「まだまだ未知数だよ。 辞める人間も多くてね。)
「あなたはどうするの?」 「俺はプロジェクトチームを任されてるからしばらくは辞められない。 落ち着いたらどうするか考えるよ。)
「うちに来ない?」 「お前の会社にか?」
「私ね、営業で飛び回ってるけど、一人じゃ背負い切れなくて困ってるのよ。) 「考えとく。」
ブラブラと歩きながら何気にフードコートを覗いてみる。 やっぱり居た。
「よう。」 気取った振りで手を挙げてみる。
康子も何も言わずに手を挙げた。 (ほんとにソフトクリーム好きだな あいつ。)
結婚していた頃を懐かしく思い出す。 すると康子が近付いてきた。
「今晩さあ、あなたの家に行ってもいい?」 「いいよ。」
「誰も居ないの?」 「俺が居る。」
「それは分かってるの。 他には居ないの?」 「居ないよ。」
「じゃあ、泊ってもいいわね?」 「あ、ああ。」
「なあに? その返事は? ダメならいいのよ。」 「いや、いいよ。」
「ほんとにいいのね?」 慎重に念を押す。
康子もおばさんになったなあ。 ってか、俺もおっさんだ。
二人並んであの日のように椅子に座っている。 コーヒーを飲みながら俺はあの日のように康子の肩を抱いた。
「馴れ馴れしいわねえ。 あ、な、た。」 「いいじゃん。 これくらいは。」
「いいけどさあ、彼女が見てたらどうするのよ?」 「居ないよ この時間は。」
「何で分かるの?」 「友達と旅行に行ってるから。」
「ふーーーん、、、そうなんだ。」 康子は半分呆れたように周りを見回した。
人込みは途切れること無く流れている。 老若男女親子夫婦兄弟姉妹、何もかも押し流すように。
俺たちが子供の頃にはショッピングモールなんて無かった。 デパートがせいぜいだったな。
焼きそばを焼いてるおばちゃんが居て、ジュースを飲みながらその焼きそばを掻き込んだんだ。 美味しかった。
鉄板焼きだったな。 だからかな、美味かったのは。
目の前で焼いてくれるんだよ。 子供の俺には待ち遠しかった。
熱々の焼き立てを皿にポンと放り込んで「あいよ!」って出してくれる。 勢いが有ったなあ。
母さんはその間に買い物を済ませるんだ。 戻ってきたころには食べ終わってる計算だな。
だからさ、昼飯はわざと食べないんだよ。 焼きそばを食べたいから。
買い物客がドッと押し寄せてきた。 大混雑だ。
さすがは土曜日。 俺は康子を見守るように外へ出てきた。
まだまだ太陽は明るい。 康子は屋上に目をやった。
アドバルーンだ。 何かの宣伝に使われているのか、アドバルーンが浮き上がっている。
「今の時代にアドバルーンなんて珍しいわねえ。」 「そうだなあ、、、ネット広告が増えてるのに、、、。」
飛行機らしい絵が描いてある。 何処かの航空会社なのだろうか?
「今晩は他の染みねえ。 久しぶりにあなたと寝れるなんて、、、。」 「そうか? 布団もそのままだからな。」
「あらやだ、、、布団もそのままなの?」 「そうだよ。」
「恥ずかしいなあ、何か。」 康子はハンドバッグの中身を確かめた。
「途中でさあ、コンビニに寄るわ。 下着持ってこなかったから。」 「あいよ。」
久しぶりに康子と二人で家に帰ってきた。 玄関もそのままだ。
「あらあら、この花瓶もそのままに置いてあるのねえ?」 「ずーーーーっと置いてあるけど、、、。」
「こないだは見なかったわよ。」 「お前が気付かなかっただけだよ。」
二人して居間の椅子に腰を下ろす。 なんだか不思議な気分だ。
少し前までそこには尚子が座っていた。 そして河井たちが騒いでいた。
前妻だとはいえ、別れてもう数年。 なぜか緊張してしまう俺である。
「久しぶりねえ。 このテレビも。」 「一応置いてあるんだ。 静かすぎると不気味だからね この部屋。」
「何か出るの?」 「そうだなあ、、、たまには幽霊さんも遊びに来るみたいだよ。」
「えーーーーーーー?」 康子は頓狂な声を上げて俺にしがみついてきた。
「おいおい、、、。」 「私が怖がりなの知ってるでしょう? 意地悪なんだから。」
「だってほんとなんだもん。 しょうがないよ。」 「明るいうちから怖がらせないでよ まったく、、、。」
それでも康子は俺から離れようとしない。 抱っこされたままで胸に顔を埋めている。
(こんな可愛い所も有ったんだな、こいつ。) そう思うと急に愛しくなってきて俺は康子の髪を撫でた。
「結婚してる時もこうしてほしかったなあ。」 「お前がしがみついてこなかっただけだよ。」
「私のせいなの?」 「そうだよ。 可愛がろうニモ「私は強い女です。」って顔してるんだもん。 可愛がれなかったよ。」
「変な言い訳。 彼女のほうがいいんでしょう? 素直に抱かせてくれるしねえ。」 「そりゃねえよ おい。」
「あら、怒っちゃった?」 「う、うん。」
「でもあなたってさあ、本気で怒ったこと無いわよねえ? 優しすぎるのよ。」 「そうかなあ?」
「まあ、あなたみたいな鈍すぎるおじさんには分からないでしょうけど、、、。」 俺から離れた康子は買い物袋を開いた。
チラッと覗いては見たが、中身はどうもさっき買ってきた下着らしいことだけは分かった。
「今夜はこれであなたを夢の世界へ連れて行ってあげるわ。」 何かを企んでいる顔である。
夕食は康子が作ってくれた。 俺は久しぶりに料理を作る康子の後姿を見た。
でも、、、。 ミニスカートから伸びる素足にドキッとしてしまって、、、。
(あの頃よりセクシーになったなあ。) 見惚れていると康子が振り向いた。
「今夜はあなたの物だから好きにしていいのよ。 襲ったって抱いたって構わないわ。」 挑戦的である。
胸元が開いたシャツ、そして見えそうで見えないスカート、、、完全に俺を挑発している。
(まあ、しばらくはやってないんだろうからそれも無理は無いか。) ぼんやりと考えているとまた康子の声が聞こえた。
「今夜はあなたに思いっきり甘えるの。 妻に戻った気分でね。」 「いつでもどうぞ。」
「あらあら、私には強気なのねえ。 彼女さんにはどうしたのかしら? 押されてばっかりだったんでしょう?」 (ギク、、、。)
「私はお見通しなのよ。 付き合ってた頃のあなたは何でも私に合わせてくれたから。) よく見てる。
これじゃあ俺には勝てないな。 兜を脱がされた思いだ。
夕食が出来上がると二人でテーブルを囲む。 テレビは消されている。
静かに静かに時間が流れていく。 なんでこんなに緊張してるんだろう?
あの日、あれだけあっさりと離婚届を書いたのに、、、。 「後は私が何とかするから役所から通知が来るのを待っててね。)
そう言って康子は持てるだけの荷物を持ってこの部屋を出て行った。 その部屋にこうして戻ってきたんだ。
でも寝室には尚子の匂いが残っているだろう。 やつだって嗅覚は鋭いから。
黙ったまま食べていると耐え切れなくなった康子が口を開いた。
「最近、会社のほうはどうなの?」 「どうって?」
「事件が続いたでしょう? やっていけそうなの?」 「まだまだ未知数だよ。 辞める人間も多くてね。)
「あなたはどうするの?」 「俺はプロジェクトチームを任されてるからしばらくは辞められない。 落ち着いたらどうするか考えるよ。)
「うちに来ない?」 「お前の会社にか?」
「私ね、営業で飛び回ってるけど、一人じゃ背負い切れなくて困ってるのよ。) 「考えとく。」