二人でお酒を飲みたいね。
(見ていいって言われてもそう簡単に見ますなんて言えないよなあ。 一人でエッチしてるなんて、、、。)
男である以上、興味が無いわけではない。 だが、それを堂々と見るのもどうか、、、。
俺にもまだまだ理性というやつが残っていたらしい。 ホッとして椅子に座ると、、、。
あんだのうんだのと寝室のほうから声が聞こえてきた。 「まったく、、、真昼間から、、、、。」
まるで汚らわしい女を見るような目で寝室のほうを見ているのだが、その内心 興味も無いわけではない。 (どんな格好で萌えてるんだ あいつは?)
襖と椅子を行ったり来たりしながらまるでご主人様のご褒美を強請る犬みたいに息を荒くしている俺、、、。 俺もやっぱり動物なんだなあ。
ライオンのオスは交尾の季節になると盛んにメスの機嫌を伺うという。 交尾しても百発百中で子供を産んでくれるとは限らない。
またオス同士の戦いに負ければハーレムを追い出され、自分が生ませた子供たちは皆噛み殺されてしまう。
百獣の王であるが故の無慈悲な厳しい掟である。
幸いにも俺は人間だ。 男同士争うことも無い。
負けたからと言って子供まで処分されることも無い。
まあね、たまに不倫だの何だのと言って争うやつらは居るけど、それだって落ち着くところに落ち着くもんだ。
彼女の取り合いにしてもそれが殺し合いにまで発展するだろうか?
縄文の遥かな昔から完璧なまでの絶対平和主義を貫いてきた日本である。
であればこそ、滅多に殺し合うことも無いはずだ。
だが、最近の日本は何処かが、何かが狂ってしまった。
金や恋愛を巡って殺しにまで至ってしまう事件があまりにも多過ぎないか?
自分をコントロールすることが出来なくなったら人間社会は終わりだぞ。
古代中国では妻は男のペットに過ぎなかった。 来客に妻の料理を差し出しても訝しがる人は居なかったと言われる。
妻の料理、、、それは妻が料理を作るのではなくて妻を料理して食べさせたということだ。
日本ではまず考えられないし想像も出来ない。 でも『三国志』などの中国版には随所にこんな話が出てくるのである。
もしも日本がこんな国になってしまったら? 想像するだけでゾッとする。
さてさて、時間が経って尚子がすっきりした顔で寝室から出てきた。 俺は無言で彼女にコーヒーを出した。
「見ても良かったのよ。」 「そうは言うけどさあ、はいはいって見れるもんでもないよ。」
「愛人でも?」 「だったら余計だね。」
「真面目なんだなあ、高木さんって。 河井さんたちなら喜んで見たかもよ。」 「そうだろうなあ。」
「妬いてるの? じゃあ見ればよかったのに。」 「だって、、、。」
そんな動画でさえ見たことは無いのだからどうリアクションしていいのか俺には分からない。
そこへ電話が掛かってきた。 「いいわ。 私が出るから。」
尚子の受け答えを聞いていると、相手はどうやら初枝のようである。 俺は胸を撫で下ろした。
だって、康子だったら困るじゃないか。 会ったことも会わせたことも無いんだから。
電話を切った尚子は椅子に座るとコーヒーを飲んでから俺に向かった。
「明日ね、取締役を全員お役御免にするんだって。」 「え? 沼井がか?」
「違うわよ。 プロジェクトチームの名前でやるの。」 「そらまたずいぶんと思い切ったなあ。」
「栄田さんがね、辞表を取りまとめたって言ってたわ。」 「よく出したねえ。」
「先代の娘も泣き付いて頼んだんだって。」 「そうか、、、それじゃなあ。」
もう夕方である。 台所も薄暗くなってきた。 最近はあの事件も報道されなくなって会社にも活気が戻りつつあるようだ。
管理部だった部屋は封鎖されたまま。 営業部とカスタマーセンターが合併するらしい。
そして開発部と秘書室も合併した。 女性の意見を取り入れないと世間がうるさいのだと、、、。
「後追いだとは思うけど、やらないよりはいいわよ。」 尚子も少しずつ進み出した改革に安堵した様子である。
「今夜さあ、飲みに行かない?」 「何処へ?」
「ま、る、い、ち、よ。」 「あそこか、、、。」
なんとなく気は進まないが愛くるしく笑う尚子には逆らえない。 電話してみると奥のボックスは空いているらしかった。
着替えを済ませてからタクシーを呼び付ける。 久しぶりの外出だ。
尚子も今夜はいつもと違って見えてくる。 不思議なもんだね。
店の前に来るとあの人は全く違う店構えになっているのに俺は驚いた。 「あのままだったら誰も来ないのよ。 だからこんな風に変えたんだって。」
これまでは何処にでも在る飲み屋って雰囲気だった。 それが、、、。
ガラガラっと開けるガラス戸を潜って中へ入る。 店員の一人が俺に気付いて飛んできた。
「おケガは大丈夫ですか?」 「もう何ともないよ。」
「そうなんですね? あの日は心配しました。 死ぬんじゃないかって。」 「ありがとう。 俺も悪運はめっちゃ強いから大丈夫だよ。」
話していると奥から店長らしい女が出てきた。 「ようこそ、いらっしゃいました。 おケガの様子はどうですか?」
「もう大丈夫だよ。」 「今夜もたくさん飲んでいってくださいね。」
笑顔の素敵な店長である。 俺たちは何も言わずに奥のボックスに落ち着いた。
「えっと、、、ビールでいいのよね?」 「うん。 、、、だな。」
メニューは尚子に任せて隣のグループの話に耳を澄ませてみる。 背広男の三人組らしい。
何だか会社の経営論を戦わせているらしいが、飲み始める時にそんな話するなよって言いたくなる。
尚子はそんなのにはお構いなしで注文をどんどん入れていく。 枝豆に唐揚げ、煮物に出汁巻き卵、、、。
揚げ出し豆腐に酢の物まで。 「今晩は復活祝いですからね、どんどん食べてね。」
「復活? ゴジラみたいだなあ。」 「高木さんはゴジラ以上よ。」
「怪獣より上か、、、。 こりゃあまいったな。」 飲んでいるとまたガラス戸が開いた。
だんだんと店内も賑やかになってきたらしい。 壁のチラシを見ると最近では食べ放題も始めたと書いてある。
若い客が多そうだ。 以前はおじさんの溜まり場って感じだったのにね。
背広のグループはまだ飲んでいる。 なかなかに強そうだねえ。
尚子は唐揚げを摘まみながらテレビを見ていた。 そろそろ、あの事件も裁判を迎えるようだ。
(会社もこれから変わってくる。 俺も今まで以上に頑張らないとな、、、。 あいつのためにも。)
そういえば駐車場の片隅に慰霊碑を立てるって話が出てきてたな。 あの駐車場も使えるようにしないと、、、。
10時を過ぎて店内はますます盛り上がってきた。 「そろそろ出ましょうか。 お腹もいっぱいだし、あれじゃあ落ち着かないし、、、。」
「そうだね。 散歩しようか。」 「じゃあ、お金払ってきますね。」
尚子の後姿を目で追い掛ける。 一人の女に過ぎなかった彼女がどうしてここまで愛しく思えるのだろうか?
抱いたから? それとも一緒に居るから?
それだけではないような気もするし、それだけのような気もする。
男と女の仲ってのは分かるようで分からないもんだなあ。
スッと離婚したかと思うと何も無かったようにくっ付いてくるやつも居るわけだし、絶対に離れないって思ってた奴があっさりと離れて二度とくっ付かなくなることだって有るんだし。
男である以上、興味が無いわけではない。 だが、それを堂々と見るのもどうか、、、。
俺にもまだまだ理性というやつが残っていたらしい。 ホッとして椅子に座ると、、、。
あんだのうんだのと寝室のほうから声が聞こえてきた。 「まったく、、、真昼間から、、、、。」
まるで汚らわしい女を見るような目で寝室のほうを見ているのだが、その内心 興味も無いわけではない。 (どんな格好で萌えてるんだ あいつは?)
襖と椅子を行ったり来たりしながらまるでご主人様のご褒美を強請る犬みたいに息を荒くしている俺、、、。 俺もやっぱり動物なんだなあ。
ライオンのオスは交尾の季節になると盛んにメスの機嫌を伺うという。 交尾しても百発百中で子供を産んでくれるとは限らない。
またオス同士の戦いに負ければハーレムを追い出され、自分が生ませた子供たちは皆噛み殺されてしまう。
百獣の王であるが故の無慈悲な厳しい掟である。
幸いにも俺は人間だ。 男同士争うことも無い。
負けたからと言って子供まで処分されることも無い。
まあね、たまに不倫だの何だのと言って争うやつらは居るけど、それだって落ち着くところに落ち着くもんだ。
彼女の取り合いにしてもそれが殺し合いにまで発展するだろうか?
縄文の遥かな昔から完璧なまでの絶対平和主義を貫いてきた日本である。
であればこそ、滅多に殺し合うことも無いはずだ。
だが、最近の日本は何処かが、何かが狂ってしまった。
金や恋愛を巡って殺しにまで至ってしまう事件があまりにも多過ぎないか?
自分をコントロールすることが出来なくなったら人間社会は終わりだぞ。
古代中国では妻は男のペットに過ぎなかった。 来客に妻の料理を差し出しても訝しがる人は居なかったと言われる。
妻の料理、、、それは妻が料理を作るのではなくて妻を料理して食べさせたということだ。
日本ではまず考えられないし想像も出来ない。 でも『三国志』などの中国版には随所にこんな話が出てくるのである。
もしも日本がこんな国になってしまったら? 想像するだけでゾッとする。
さてさて、時間が経って尚子がすっきりした顔で寝室から出てきた。 俺は無言で彼女にコーヒーを出した。
「見ても良かったのよ。」 「そうは言うけどさあ、はいはいって見れるもんでもないよ。」
「愛人でも?」 「だったら余計だね。」
「真面目なんだなあ、高木さんって。 河井さんたちなら喜んで見たかもよ。」 「そうだろうなあ。」
「妬いてるの? じゃあ見ればよかったのに。」 「だって、、、。」
そんな動画でさえ見たことは無いのだからどうリアクションしていいのか俺には分からない。
そこへ電話が掛かってきた。 「いいわ。 私が出るから。」
尚子の受け答えを聞いていると、相手はどうやら初枝のようである。 俺は胸を撫で下ろした。
だって、康子だったら困るじゃないか。 会ったことも会わせたことも無いんだから。
電話を切った尚子は椅子に座るとコーヒーを飲んでから俺に向かった。
「明日ね、取締役を全員お役御免にするんだって。」 「え? 沼井がか?」
「違うわよ。 プロジェクトチームの名前でやるの。」 「そらまたずいぶんと思い切ったなあ。」
「栄田さんがね、辞表を取りまとめたって言ってたわ。」 「よく出したねえ。」
「先代の娘も泣き付いて頼んだんだって。」 「そうか、、、それじゃなあ。」
もう夕方である。 台所も薄暗くなってきた。 最近はあの事件も報道されなくなって会社にも活気が戻りつつあるようだ。
管理部だった部屋は封鎖されたまま。 営業部とカスタマーセンターが合併するらしい。
そして開発部と秘書室も合併した。 女性の意見を取り入れないと世間がうるさいのだと、、、。
「後追いだとは思うけど、やらないよりはいいわよ。」 尚子も少しずつ進み出した改革に安堵した様子である。
「今夜さあ、飲みに行かない?」 「何処へ?」
「ま、る、い、ち、よ。」 「あそこか、、、。」
なんとなく気は進まないが愛くるしく笑う尚子には逆らえない。 電話してみると奥のボックスは空いているらしかった。
着替えを済ませてからタクシーを呼び付ける。 久しぶりの外出だ。
尚子も今夜はいつもと違って見えてくる。 不思議なもんだね。
店の前に来るとあの人は全く違う店構えになっているのに俺は驚いた。 「あのままだったら誰も来ないのよ。 だからこんな風に変えたんだって。」
これまでは何処にでも在る飲み屋って雰囲気だった。 それが、、、。
ガラガラっと開けるガラス戸を潜って中へ入る。 店員の一人が俺に気付いて飛んできた。
「おケガは大丈夫ですか?」 「もう何ともないよ。」
「そうなんですね? あの日は心配しました。 死ぬんじゃないかって。」 「ありがとう。 俺も悪運はめっちゃ強いから大丈夫だよ。」
話していると奥から店長らしい女が出てきた。 「ようこそ、いらっしゃいました。 おケガの様子はどうですか?」
「もう大丈夫だよ。」 「今夜もたくさん飲んでいってくださいね。」
笑顔の素敵な店長である。 俺たちは何も言わずに奥のボックスに落ち着いた。
「えっと、、、ビールでいいのよね?」 「うん。 、、、だな。」
メニューは尚子に任せて隣のグループの話に耳を澄ませてみる。 背広男の三人組らしい。
何だか会社の経営論を戦わせているらしいが、飲み始める時にそんな話するなよって言いたくなる。
尚子はそんなのにはお構いなしで注文をどんどん入れていく。 枝豆に唐揚げ、煮物に出汁巻き卵、、、。
揚げ出し豆腐に酢の物まで。 「今晩は復活祝いですからね、どんどん食べてね。」
「復活? ゴジラみたいだなあ。」 「高木さんはゴジラ以上よ。」
「怪獣より上か、、、。 こりゃあまいったな。」 飲んでいるとまたガラス戸が開いた。
だんだんと店内も賑やかになってきたらしい。 壁のチラシを見ると最近では食べ放題も始めたと書いてある。
若い客が多そうだ。 以前はおじさんの溜まり場って感じだったのにね。
背広のグループはまだ飲んでいる。 なかなかに強そうだねえ。
尚子は唐揚げを摘まみながらテレビを見ていた。 そろそろ、あの事件も裁判を迎えるようだ。
(会社もこれから変わってくる。 俺も今まで以上に頑張らないとな、、、。 あいつのためにも。)
そういえば駐車場の片隅に慰霊碑を立てるって話が出てきてたな。 あの駐車場も使えるようにしないと、、、。
10時を過ぎて店内はますます盛り上がってきた。 「そろそろ出ましょうか。 お腹もいっぱいだし、あれじゃあ落ち着かないし、、、。」
「そうだね。 散歩しようか。」 「じゃあ、お金払ってきますね。」
尚子の後姿を目で追い掛ける。 一人の女に過ぎなかった彼女がどうしてここまで愛しく思えるのだろうか?
抱いたから? それとも一緒に居るから?
それだけではないような気もするし、それだけのような気もする。
男と女の仲ってのは分かるようで分からないもんだなあ。
スッと離婚したかと思うと何も無かったようにくっ付いてくるやつも居るわけだし、絶対に離れないって思ってた奴があっさりと離れて二度とくっ付かなくなることだって有るんだし。