二人でお酒を飲みたいね。
尚子と初枝は話しながら冷蔵庫の中を覗いた。 「野菜買ってこなきゃ、、、。」
「そうだ。 肉も無いじゃない。」 「最近はずっと弁当だったからさ、、、。」
「体に毒よ。 ちゃんと作って食べなさい。」 「尚子ママ やるーーー。」
「ママになりたいわ。 中年の一人暮らしはこれなんだから。」 「そうねえ。 二人でコントロールしましょうか。」
「おいおい、、、。」 「だってさあ、毎日弁当じゃダメよ やっぱり。」
二人は相談しながら買い物に出て行った。 「今晩もって言ってたよな さっき。」
俺は何とも複雑な思いがするのである。 親しいとはいえ、うちの女子社員だ。
しかも初枝は結婚している身だ。 旦那が留守だとは言ってもこれではなあ。
居間にポツンと座ってベランダを見る。 何も植えてない鉢が転がっている。
康子がチューリップを植えていた鉢だ。 中は泥だらけ、、、。
転がったままで直すことも洗うことも無く放置している。 何処かで犬が吠えている。
通りを行き交う車も少なくて、たまにじいさんたちが歩いているだけ。
テレビを点けてみる。 でも面白い番組なんて土曜日の真昼間にはやってないな。
「だからさあ、そうなのよ。」 「そっか。 栄田君たちは飲むことと遊ぶことしか考えてないのねえ。」
「そうそう。 だから今頃はソープでお泊りなんじゃないの?」 「それはどうかなあ? そこまで余裕が有るとは思えないわよ。」
俺が座っているのにも気付かずに、二人は冷蔵庫へまっしぐら。 扉を開けるとあれやこれやと中へ入れ始めた。
「4時か。 そろそろ作り始めるかな。」 「そうね。 仕込みが大変だから。」
どうやら二人とも俺の姿は目に映っていないらしい。 (まあいいか。)
たれを作っている。 ニンニクだの、醤油だの、酒だの、鍋に入れてかき混ぜているようだ。
「何か美味そうな匂いがするねえ。」 テレビを見ながらポツリと言ってみる。
でも尚子たちには聞こえていないらしい。 肉や玉ねぎなどを切りながらボールに積み上げている。
「よし、、、と。 準備は出来たかな?」 「オッケーよ。 後はプレートを出すだけ。」
そういえば、ほるもんも乗っかっていたような、、、。 「今夜はスタミナ焼きですからね。 覚悟して食べてくださいね。」
尚子はスーパーマンみたいな恰好をして笑って見せた。
「スタミナ焼きか、、、食べてなかったな。」 「そうなの? でもやってる時は激しいじゃない。」
「そうなの? 激しいセックスに憧れるなあ。」 「しょうがない人たちだなあ。」
「いいじゃない。 飢えてるのよ これでも。」 「会社じゃあ絶対に言わないけどね。」
「そりゃそうだ。 会社で言ったら大問題だよ。」 「それこそ相談室に飛び込むわ。 高木さーーーーーんって。」
「止してくれよ。 俺は、、、。」 「分かってるわよ。 尚子ちゃんのダーリンなんでしょう?」
ここまで突っ込まれたら何も言えないなあ。 確かに尚子は嫌いじゃない。
「さあさあ、焼くわよ。」 プレートが焼けてきていい感じに煙も出てきた。
初枝は肉をどんどん載せていく。 「遠慮しないで食べてねえ。 尚子ちゃん。」
「はーい。 食べます 初枝ママ。」 二人は楽しそうである。
テレビも一応は点けてあるが誰も見ていない。 肉を摘まみビールを飲みながら話は次第に会社の今後に、、、。
「沼井さんってさあ、もうすぐ定年でしょう? 次期社長は誰なのかなあ?」 「待て待て。 沼井さんにはもっと頑張ってもらわなきゃ、、、。」
「でもさあ、64歳なのよ。 しっかり考えないと、、、。」 「それだったら高木さんが居るわよ。 後釜は居るんだから大丈夫。」
「そっか。 高木さんと栄田さんが居るわね。」 「毎晩、飲み会になりそうだけどさ、、、。」
「おいおい、そりゃ無いよ。」 「いいの。 私たちの妄想だから黙ってて。」
「お嬢様はこれだからなあ。」 「誰がお嬢様だって?」
初枝は箸を俺に向けてきた。 「これじゃあ女王様じゃない。 初枝さん。」
「尚子ちゃんも言うわねえ。」 「酔ってるから。」
栄田たちが居ないからいいものの、居たら大変だろうなあ。
その頃、栄田と河井は沼井を連れて京都旅行をしていた。 金閣寺と嵐山を回るらしい。
「さすがにキンキラキーンか。 贅沢だったんだなあ。 義満さんって。」 「秀吉もすごかったって聞いてるぞ。」
「家康なんて800兆円も持ってたんだろう? 全部使ったのかな?」 「治水工事なんかで使ったとは聞いてるけど。」
「江戸の町を作ったんだ。 それだけでも相当に使ってるはずだよ。」
「京都と言えば舞妓さん。 今夜は飲みましょうね 社長。」 「それはいいが、、、。」
「大丈夫。 金なら俺の財布から出しますから。」 「河井ってさ、女のことになったらすぐ金を出すんだよ。」
「そうか。」 「だって、会社の鐘で遊んだら大問題ですよ。」
「それもそうだ。」 「湿っぽい顔しないで今夜は遊びましょうねえ。 社長。」
尚子のスマホには時々栄田からラインが流れてくる。 「楽しそうねえ。」
それを見ながらビールを飲んでいる彼女はどこか羨ましそうだ。 「私も旅行したい。」
「じゃあ、二人で旅行しようか。」 「いいわねえ。 高木さんと。」
「え? そっちなの? やだあ。」 「ごめんごめん。 初枝さん。」
いやいや、今夜も相変わらずだ。 聞いているとハラハラしっぱなしだよ。
ほるもんもだいぶ無くなってきた。 「食べてくれたわねえ。 今夜はパワフルにやれそうね?」
「何を?」 「もちろん、エ、、ッ、チ、よ。」
「まあまあ、初枝さん やる気ね?」 「私だって女ですから。」
「大変だ。 二人も牝が居る。」 「牝?」
「何も無ければいいがなあ。」 「酔ってるのに言わないで。」
10時を過ぎて眠くなってきた俺たちは寝室に並べた布団に潜り込んだ。 「襲ってもいいわよ。」
初枝が耳元で囁いてくる。 尚子は寝たふりをしているのか、黙っている。
俺はぼんやりした頭で初枝を抱いた。
「良かったわよ。 高木さん。 尚子ちゃんとも絡んでるのね?」 「いやいや、、、。」
尚子が寝ているのを確認した俺たちは居間に戻ってきた。 「なんかすっきりしたわ。」
「そうなの?」 「だってさあ、旦那は忙しいからって相手してくれないのよ。」
「そりゃ寂しいなあ。」 「でしょう? そんな時にさあ、こうやって激しく抱かれたんだもん。 嫌なことも忘れちゃうわよ。」
そう言いながらコーヒーを飲む初枝を見ながら、俺はふと康子のことを思い出した。
最近は電話すらしてこない。 たまにはこちらから掛けようかと思うんだけど、どうも気が引けてしまって、、、。
外は静かである。 時々風が吹いてくるくらいだ。
明日は日曜日。 夕方には初枝も家へ帰るという。 それまではのんびり過ごしたいらしい。
俺は何を思ったのか、散歩したくなって外へ出た。 すると初枝も後から付いてきた。
「どうしたの?」 「たまには歩きたいなと思ってさ。」
「そっか。 奥さんとは散歩してたの?」 「近くに公園が在るからね。」
話しながら歩いていく。 歩いている人も居ない。
まあ、こんな真夜中に歩く人も居ないだろう。 俺は初枝の肩を抱いてみた。
「新婚当時を思い出すわあ。 あの頃は旦那もくっ付いてたのよねえ。」 「俺だってそうだったよ。」
「何で離婚したの?」 「分からない。 気付いたら離婚してたんだ。」
「そんなのって有り?」 「お互いにさあ、なんとなくくっ付いたもんだからなんとなく別れちゃったんだよ。」
「もめなかったのね?」 「もめるも何も無かったよ。 だからあいつも娘が家を出ていくみたいに持ちたい物だけ持って出て行ったんだ。」
「ってことは、、、あの部屋に置いてある物って奥さんの?」 「そうだよ。」
「戻ってきたらいいわねえ。」 「たぶんねえ、、、。」
街灯が静かに辺りを照らしている。 床屋の看板が今にも倒れそう、、、。
酒屋の前には自転車が放置されている。 自販機の前には吸い殻や空き缶が転がっている。
「昭和の頃みたいねえ。 ここだけ昔に戻ったみたい。」 「そうだろう? だから好きなんだ。」
初枝は公園に入るとベンチに腰を下ろした。 「静かよねえ。」
「そうだ。 肉も無いじゃない。」 「最近はずっと弁当だったからさ、、、。」
「体に毒よ。 ちゃんと作って食べなさい。」 「尚子ママ やるーーー。」
「ママになりたいわ。 中年の一人暮らしはこれなんだから。」 「そうねえ。 二人でコントロールしましょうか。」
「おいおい、、、。」 「だってさあ、毎日弁当じゃダメよ やっぱり。」
二人は相談しながら買い物に出て行った。 「今晩もって言ってたよな さっき。」
俺は何とも複雑な思いがするのである。 親しいとはいえ、うちの女子社員だ。
しかも初枝は結婚している身だ。 旦那が留守だとは言ってもこれではなあ。
居間にポツンと座ってベランダを見る。 何も植えてない鉢が転がっている。
康子がチューリップを植えていた鉢だ。 中は泥だらけ、、、。
転がったままで直すことも洗うことも無く放置している。 何処かで犬が吠えている。
通りを行き交う車も少なくて、たまにじいさんたちが歩いているだけ。
テレビを点けてみる。 でも面白い番組なんて土曜日の真昼間にはやってないな。
「だからさあ、そうなのよ。」 「そっか。 栄田君たちは飲むことと遊ぶことしか考えてないのねえ。」
「そうそう。 だから今頃はソープでお泊りなんじゃないの?」 「それはどうかなあ? そこまで余裕が有るとは思えないわよ。」
俺が座っているのにも気付かずに、二人は冷蔵庫へまっしぐら。 扉を開けるとあれやこれやと中へ入れ始めた。
「4時か。 そろそろ作り始めるかな。」 「そうね。 仕込みが大変だから。」
どうやら二人とも俺の姿は目に映っていないらしい。 (まあいいか。)
たれを作っている。 ニンニクだの、醤油だの、酒だの、鍋に入れてかき混ぜているようだ。
「何か美味そうな匂いがするねえ。」 テレビを見ながらポツリと言ってみる。
でも尚子たちには聞こえていないらしい。 肉や玉ねぎなどを切りながらボールに積み上げている。
「よし、、、と。 準備は出来たかな?」 「オッケーよ。 後はプレートを出すだけ。」
そういえば、ほるもんも乗っかっていたような、、、。 「今夜はスタミナ焼きですからね。 覚悟して食べてくださいね。」
尚子はスーパーマンみたいな恰好をして笑って見せた。
「スタミナ焼きか、、、食べてなかったな。」 「そうなの? でもやってる時は激しいじゃない。」
「そうなの? 激しいセックスに憧れるなあ。」 「しょうがない人たちだなあ。」
「いいじゃない。 飢えてるのよ これでも。」 「会社じゃあ絶対に言わないけどね。」
「そりゃそうだ。 会社で言ったら大問題だよ。」 「それこそ相談室に飛び込むわ。 高木さーーーーーんって。」
「止してくれよ。 俺は、、、。」 「分かってるわよ。 尚子ちゃんのダーリンなんでしょう?」
ここまで突っ込まれたら何も言えないなあ。 確かに尚子は嫌いじゃない。
「さあさあ、焼くわよ。」 プレートが焼けてきていい感じに煙も出てきた。
初枝は肉をどんどん載せていく。 「遠慮しないで食べてねえ。 尚子ちゃん。」
「はーい。 食べます 初枝ママ。」 二人は楽しそうである。
テレビも一応は点けてあるが誰も見ていない。 肉を摘まみビールを飲みながら話は次第に会社の今後に、、、。
「沼井さんってさあ、もうすぐ定年でしょう? 次期社長は誰なのかなあ?」 「待て待て。 沼井さんにはもっと頑張ってもらわなきゃ、、、。」
「でもさあ、64歳なのよ。 しっかり考えないと、、、。」 「それだったら高木さんが居るわよ。 後釜は居るんだから大丈夫。」
「そっか。 高木さんと栄田さんが居るわね。」 「毎晩、飲み会になりそうだけどさ、、、。」
「おいおい、そりゃ無いよ。」 「いいの。 私たちの妄想だから黙ってて。」
「お嬢様はこれだからなあ。」 「誰がお嬢様だって?」
初枝は箸を俺に向けてきた。 「これじゃあ女王様じゃない。 初枝さん。」
「尚子ちゃんも言うわねえ。」 「酔ってるから。」
栄田たちが居ないからいいものの、居たら大変だろうなあ。
その頃、栄田と河井は沼井を連れて京都旅行をしていた。 金閣寺と嵐山を回るらしい。
「さすがにキンキラキーンか。 贅沢だったんだなあ。 義満さんって。」 「秀吉もすごかったって聞いてるぞ。」
「家康なんて800兆円も持ってたんだろう? 全部使ったのかな?」 「治水工事なんかで使ったとは聞いてるけど。」
「江戸の町を作ったんだ。 それだけでも相当に使ってるはずだよ。」
「京都と言えば舞妓さん。 今夜は飲みましょうね 社長。」 「それはいいが、、、。」
「大丈夫。 金なら俺の財布から出しますから。」 「河井ってさ、女のことになったらすぐ金を出すんだよ。」
「そうか。」 「だって、会社の鐘で遊んだら大問題ですよ。」
「それもそうだ。」 「湿っぽい顔しないで今夜は遊びましょうねえ。 社長。」
尚子のスマホには時々栄田からラインが流れてくる。 「楽しそうねえ。」
それを見ながらビールを飲んでいる彼女はどこか羨ましそうだ。 「私も旅行したい。」
「じゃあ、二人で旅行しようか。」 「いいわねえ。 高木さんと。」
「え? そっちなの? やだあ。」 「ごめんごめん。 初枝さん。」
いやいや、今夜も相変わらずだ。 聞いているとハラハラしっぱなしだよ。
ほるもんもだいぶ無くなってきた。 「食べてくれたわねえ。 今夜はパワフルにやれそうね?」
「何を?」 「もちろん、エ、、ッ、チ、よ。」
「まあまあ、初枝さん やる気ね?」 「私だって女ですから。」
「大変だ。 二人も牝が居る。」 「牝?」
「何も無ければいいがなあ。」 「酔ってるのに言わないで。」
10時を過ぎて眠くなってきた俺たちは寝室に並べた布団に潜り込んだ。 「襲ってもいいわよ。」
初枝が耳元で囁いてくる。 尚子は寝たふりをしているのか、黙っている。
俺はぼんやりした頭で初枝を抱いた。
「良かったわよ。 高木さん。 尚子ちゃんとも絡んでるのね?」 「いやいや、、、。」
尚子が寝ているのを確認した俺たちは居間に戻ってきた。 「なんかすっきりしたわ。」
「そうなの?」 「だってさあ、旦那は忙しいからって相手してくれないのよ。」
「そりゃ寂しいなあ。」 「でしょう? そんな時にさあ、こうやって激しく抱かれたんだもん。 嫌なことも忘れちゃうわよ。」
そう言いながらコーヒーを飲む初枝を見ながら、俺はふと康子のことを思い出した。
最近は電話すらしてこない。 たまにはこちらから掛けようかと思うんだけど、どうも気が引けてしまって、、、。
外は静かである。 時々風が吹いてくるくらいだ。
明日は日曜日。 夕方には初枝も家へ帰るという。 それまではのんびり過ごしたいらしい。
俺は何を思ったのか、散歩したくなって外へ出た。 すると初枝も後から付いてきた。
「どうしたの?」 「たまには歩きたいなと思ってさ。」
「そっか。 奥さんとは散歩してたの?」 「近くに公園が在るからね。」
話しながら歩いていく。 歩いている人も居ない。
まあ、こんな真夜中に歩く人も居ないだろう。 俺は初枝の肩を抱いてみた。
「新婚当時を思い出すわあ。 あの頃は旦那もくっ付いてたのよねえ。」 「俺だってそうだったよ。」
「何で離婚したの?」 「分からない。 気付いたら離婚してたんだ。」
「そんなのって有り?」 「お互いにさあ、なんとなくくっ付いたもんだからなんとなく別れちゃったんだよ。」
「もめなかったのね?」 「もめるも何も無かったよ。 だからあいつも娘が家を出ていくみたいに持ちたい物だけ持って出て行ったんだ。」
「ってことは、、、あの部屋に置いてある物って奥さんの?」 「そうだよ。」
「戻ってきたらいいわねえ。」 「たぶんねえ、、、。」
街灯が静かに辺りを照らしている。 床屋の看板が今にも倒れそう、、、。
酒屋の前には自転車が放置されている。 自販機の前には吸い殻や空き缶が転がっている。
「昭和の頃みたいねえ。 ここだけ昔に戻ったみたい。」 「そうだろう? だから好きなんだ。」
初枝は公園に入るとベンチに腰を下ろした。 「静かよねえ。」