二人でお酒を飲みたいね。
いつものように布団を敷いて康子をそこに寝かせる。 俺は隣に寝るのがどうも気が引けて、、、。
そんなに寒くもないから抱き枕を抱き込んで毛布をかぶって寝てしまった。
静かな静かな部屋で俺たちの寝息だけが聞こえている。 結婚していたあの頃みたいにね。
違うのは一緒にくっ付いて寝てない事だけ。 夫婦でも恋人でもないんだからさ、、、。
居間のほうではカチカチって時計の動く音がしている。 デジタル時計はどうも苦手でさ、今でもアナログ時計を使ってるんだ。
康子が居た時もそうだった。 あいつはアナログ時計には何も言わなかったな。
真夜中、通りをパトカーが走って行った。 何か有ったのかな?
たまに轢き逃げ犯を追い掛けてたりするからねえ。
翌朝、俺たちが目を覚ましたのは11時を過ぎたころだった。 「よく寝たわね。」
「ああ。 すっかり落ち着いてたみたいだぞ。」 「私が? まさか、、、。」
康子はコーヒーを飲みながら笑っている。 「まさか、、、だよ。」
「ふーん、、、あなたがそう思っただけじゃないの?」 「そうかもしれないなあ。」
「簡単に認めるのね?」 「だって夫婦じゃないんだもん。」
「それもそうだわ。」 康子はカップを置いた。
「私の部屋もそのままなのねえ?」 「模様替えしたかったけどな。」
「しちゃえば良かったのに。」 「でも出来ないよ。 この家具は動かせなくて。」
「そうか。 タンスはさすがに動かせないか。」 康子は改めて部屋を見回した。
「うーん、私の物は全て残してあるのね?」 「そうだよ。」
康子はお気に入りだった机に座ってみた。 (懐かしいな、、、。)
だからといって夫婦に戻る気は無さそうだ。 それならそれでいい。
俺は新しいコーヒーを注いだ。
「この3年間、何をしてたんだ?」 「仕事。」
「は? それだけじゃないだろう?」 「それ以内でもそれ以外でもないわよ。」
康子は澄ましてコーヒーを飲んでいる。 (じゃなかったら誘えないか、、、。)
俺は何となく理解できたような気がした。 もともと派手に遊んでいる女でもなかったからな。
紹介されて付き合って気付いたら結婚して、それでまた気付いたら離婚してたんだ。 派手でも地味でもない。
お互いに遊びを経験することも無く遊ばれることも無く平凡な者同士結ばれて離れただけだ。
静かに時間が流れていく。 だからってそれが苦になるわけでもなく、楽しんでいる風でもない。
康子が不意に立ち上がった。 何処に行くのかと思ったら、、、。
俺は珍しく待ち伏せてみた。 (どんな顔するかなあ?)
「あら、そこに居たの。」 用を済ませて帰ってきた彼女はポカンとした顔で俺を見た。
「あなたのやることは分かってるわよ。」 苦笑している俺を見てクスッと笑う。
(してやったり、、、か。) そう思いながらも康子の肩に腕を回す。
「馴れ馴れしいなあ。」 「いいじゃん。」
「いいけどさあ、やるなら、、、。」 またまた不意を突いて康子が向き直る。
「抱いていいわよ。 あの日みたいに。」 ド直球で来るものだから俺は考えてしまった。
そしたら康子が飛び込んできた。 「ほんとはね、寂しかったの。 あなたが居ないから。」
そう言って明るいうちからキスをせがんでくるのである。 思い切り焦るじゃないか。
中年の離婚夫婦が再開してキスをするなんて、、、。 俺が目を瞑っていると康子の鼻息をすぐそばで感じた。
そして康子の唇が触れてきた。 思わず体を固くした俺を見てまた康子が笑った。
「ほんとに初心なんだから。 あなたって、、、。」 「お前が慣れてるんだよ。」
「え? あなた以外は誰ともしてないわよ。」 髪を整えながら康子は椅子に座り直す。
ますます不思議なのである。 ということは、生まれながらにしておませだったのか?
いつの間にか夕方になってしまった。 「仕事が有るから帰るわね。 頑張ってね メール屋さん。」
何処までも俺をキリキリっと虐めたいらしい。 あの頃と変わらないなあ。
「ああ。 またそのお尻を持っておいで。」 懸命に反撃したつもりなのだが、康子はもう居なかった。
そしてまた一人ぼっちの夜が始まるのである。 何か空しいな。
ガランとした雰囲気はいかにも寒々しく感じる。 人形でも並べるか。
でもまたすぐに飽きて物置に放り込むんだろう。 それじゃあ意味が無い。
かといって康子の写真を飾ろうとは思わないし、、、。 死んだわけじゃないんだからさ。
あれやこれやと考えながら今夜も酔って寝るのである。 芸が無い狸である。
狸も狐も酒を飲むと聞いたことが有る。 俺たちみたいだなあ。
康子が寝ていた布団に寝てみる。 ホンワカと温もりが伝わってくる。
「これで明日も頑張れるぞ。」 俺はそう思った。
そんなに寒くもないから抱き枕を抱き込んで毛布をかぶって寝てしまった。
静かな静かな部屋で俺たちの寝息だけが聞こえている。 結婚していたあの頃みたいにね。
違うのは一緒にくっ付いて寝てない事だけ。 夫婦でも恋人でもないんだからさ、、、。
居間のほうではカチカチって時計の動く音がしている。 デジタル時計はどうも苦手でさ、今でもアナログ時計を使ってるんだ。
康子が居た時もそうだった。 あいつはアナログ時計には何も言わなかったな。
真夜中、通りをパトカーが走って行った。 何か有ったのかな?
たまに轢き逃げ犯を追い掛けてたりするからねえ。
翌朝、俺たちが目を覚ましたのは11時を過ぎたころだった。 「よく寝たわね。」
「ああ。 すっかり落ち着いてたみたいだぞ。」 「私が? まさか、、、。」
康子はコーヒーを飲みながら笑っている。 「まさか、、、だよ。」
「ふーん、、、あなたがそう思っただけじゃないの?」 「そうかもしれないなあ。」
「簡単に認めるのね?」 「だって夫婦じゃないんだもん。」
「それもそうだわ。」 康子はカップを置いた。
「私の部屋もそのままなのねえ?」 「模様替えしたかったけどな。」
「しちゃえば良かったのに。」 「でも出来ないよ。 この家具は動かせなくて。」
「そうか。 タンスはさすがに動かせないか。」 康子は改めて部屋を見回した。
「うーん、私の物は全て残してあるのね?」 「そうだよ。」
康子はお気に入りだった机に座ってみた。 (懐かしいな、、、。)
だからといって夫婦に戻る気は無さそうだ。 それならそれでいい。
俺は新しいコーヒーを注いだ。
「この3年間、何をしてたんだ?」 「仕事。」
「は? それだけじゃないだろう?」 「それ以内でもそれ以外でもないわよ。」
康子は澄ましてコーヒーを飲んでいる。 (じゃなかったら誘えないか、、、。)
俺は何となく理解できたような気がした。 もともと派手に遊んでいる女でもなかったからな。
紹介されて付き合って気付いたら結婚して、それでまた気付いたら離婚してたんだ。 派手でも地味でもない。
お互いに遊びを経験することも無く遊ばれることも無く平凡な者同士結ばれて離れただけだ。
静かに時間が流れていく。 だからってそれが苦になるわけでもなく、楽しんでいる風でもない。
康子が不意に立ち上がった。 何処に行くのかと思ったら、、、。
俺は珍しく待ち伏せてみた。 (どんな顔するかなあ?)
「あら、そこに居たの。」 用を済ませて帰ってきた彼女はポカンとした顔で俺を見た。
「あなたのやることは分かってるわよ。」 苦笑している俺を見てクスッと笑う。
(してやったり、、、か。) そう思いながらも康子の肩に腕を回す。
「馴れ馴れしいなあ。」 「いいじゃん。」
「いいけどさあ、やるなら、、、。」 またまた不意を突いて康子が向き直る。
「抱いていいわよ。 あの日みたいに。」 ド直球で来るものだから俺は考えてしまった。
そしたら康子が飛び込んできた。 「ほんとはね、寂しかったの。 あなたが居ないから。」
そう言って明るいうちからキスをせがんでくるのである。 思い切り焦るじゃないか。
中年の離婚夫婦が再開してキスをするなんて、、、。 俺が目を瞑っていると康子の鼻息をすぐそばで感じた。
そして康子の唇が触れてきた。 思わず体を固くした俺を見てまた康子が笑った。
「ほんとに初心なんだから。 あなたって、、、。」 「お前が慣れてるんだよ。」
「え? あなた以外は誰ともしてないわよ。」 髪を整えながら康子は椅子に座り直す。
ますます不思議なのである。 ということは、生まれながらにしておませだったのか?
いつの間にか夕方になってしまった。 「仕事が有るから帰るわね。 頑張ってね メール屋さん。」
何処までも俺をキリキリっと虐めたいらしい。 あの頃と変わらないなあ。
「ああ。 またそのお尻を持っておいで。」 懸命に反撃したつもりなのだが、康子はもう居なかった。
そしてまた一人ぼっちの夜が始まるのである。 何か空しいな。
ガランとした雰囲気はいかにも寒々しく感じる。 人形でも並べるか。
でもまたすぐに飽きて物置に放り込むんだろう。 それじゃあ意味が無い。
かといって康子の写真を飾ろうとは思わないし、、、。 死んだわけじゃないんだからさ。
あれやこれやと考えながら今夜も酔って寝るのである。 芸が無い狸である。
狸も狐も酒を飲むと聞いたことが有る。 俺たちみたいだなあ。
康子が寝ていた布団に寝てみる。 ホンワカと温もりが伝わってくる。
「これで明日も頑張れるぞ。」 俺はそう思った。