二人でお酒を飲みたいね。
翌日は月曜日。 いつものように冴えない顔で俺はパソコンの前に座る。
メールを開いてみるとこれまたいつものように問い合わせやらクレームやらがランダムに並んでいる。
(いつもと同じだな。 気怠い一週間が始まったのか。) 一通ずつ開いては確認していく。
隣では古参社員の古川直樹さんが週刊誌を読んでいる。 (飽きないなあ。)
隣室は商品開発部。 今日もあれやこれやと喧嘩しているらしい。
「アホの集まりじゃあ使い物にならんなあ。 有難迷惑だ。」 古川さんも俺と同じことを考えていた。
昼になり、外へ出ようとすると会計部の根本かおりが落ち込んだ顔で出てきた。
「どうした?」 「今月は売り上げが上がらないのよ。」
「そう? いい線行ってると思ったんだけどなあ。」 「新商品が売れないのよね。 昔から有る物は売れてるんだけど、、、。」
「だからって今更、新品を引っ込めるわけには、、、。」 「そうなのよねえ。 そこが問題なの。」
「開発部は何か言ってる?」 「まだ話してないのよ。 もめるのは分かってるから。」
「そうだよなあ。 やつらはもめることしか脳が無いから。」 「うーーーん。」
社を出ると俺たちは並んでいつものラーメン屋に入った。 「よし。 塩ラーメンね。」
二人並んで塩ラーメンを食べる。 今日も店は忙しそう。
お盆を持って店員が走り回っている。 調理場のほうは湯気が立ち込めて主人がテボを振っている。
涼子も落ち着かないように見える。 今日も賑やかだねえ。
俺はラーメンを啜りながら康子のことを考えている。 初めて会った時みたいにね。
あの頃は休みのたびに喫茶店に行った。 そしてたまに居酒屋にも、、、。
しかし康子は居酒屋に入ってもウーロン茶を飲んでいた。 「私ね、お酒飲めないのよ。」
そう言いながらウーロン茶を飲むのである。 たまに変わった物を、、、と思ったらカルピスソーダだったりしてね。
たまに酎ハイを勧めたりもしたけれど、飲みたいって言ったことは一度も無かったな。 ぶれない女だった。
そんな康子と結婚したんだ。 「玄関にさあ、鉢植えを置こうよ。」
殺風景な部屋にいろんな飾りを置いていった。 可愛かったねえ。
食堂にも寝室にもぬいぐるみが置かれていたよね。 あいつはいろいろと考えてたんだ。
もちろん、俺は何も言わなかったよ。 康子がやってることだから。
そうやって夜は布団の中で愛し合う。 汗だくにまでなって。
でもとうとう来なかった。 来ないままで俺たちは離婚した。
来なかったからって悔いは残らなかったな。 そんなことも有るさって。
仕事を終えるといつものように俺は一人で部屋へ帰る。 途中まで一緒に帰る人は居るけれど、、、。
「ねえねえ、今夜さあ飲みに行きませんか?」 玄関まで行ったら事務員の山本尚子さんが声を掛けてきた。
この人も五十路のお姉さんだ。 なんだか寂しげな色気を感じる。
「山本さんとかい?」 「私じゃダメ?」
「いやいや、そうでもないんだ。」 「じゃあ行きましょうよ。」
尚子の笑顔に誘われて俺は飲みに行くことにした。 「何処まで行くの?」
「駅前の丸一。」 「えーーーーー!」
「どうしたの?」 「いや、何でもない。」
取り乱す所だった。 丸一はこないだ、康子と飲みに行ったあの店だ。
尚子はどっか楽しそうだ。 確かこの人も結婚してなかったはず、、、。
噂では男っ気がまるで無いと聞いたことも有る。 抱かれたことも無いのかな?
でもさ、そんなことって女には聞けないよなあ。 いくら中年でも無理だよな。
考え事をしていたら丸一に着いてしまった。 「ねえ、入りましょう。」
尚子はさっさと暖簾を潜っていく。 俺は後から付いていくだけ。
「ここがいいわね。」 尚子が座ったのも一番奥のボックスだった。
ボックスに落ち着くと尚子はメニュー表を開いた。 「何飲みますか?」
「俺はビールでいいよ。」 「じゃあ、私もビールにしようっと。」
俺はなぜか緊張している。 康子以外の女性とこの店に来たからか、、、?
「お待ち同様です。 ビールをお持ちしました。」 店員がジョッキを二人の前に置いていく。
「乾杯しましょう。」 平日の夜に女と二人で飲むビール、、、。
俺には意外な気がしている。 今まで無かったんだからね。
確かに社の飲み会で一緒になることは多かったさ。 でも二人きりなんてなあ。
康子以外の女性と飲むなんて考えられなかった。 でも今は尚子が前に居る。
「私ね、キスすらしたことが無いのよ。」 「え?」
「なあに? その驚き用は。 遊んでるように見えてた?」 「遊んでるとは思わないけどさ、、、。」
「でもねえ、私って彼氏も出来ないのよ。 寂しい女でしょう?」 「信じられないなあ。 可愛いのに?」
「女って可愛いだけじゃ無理なのねえ。 何でも出来ないと惚れてくれないみたい。」 「そんなこと無いよ。 チャンスは有るんじゃないの?」
「あなたなんかいいかもねえ。」 「俺?」
尚子は唐揚げを摘まみながら俺の顔を覗くのであった。
「高木さんなんて良さそうだもんねえ。 なんか優しそうだし、、、。」 「でもさ、俺も離婚してるんだよ。」
「だからなおさらに憧れるの。 何って言うのかなあ? 中年の哀愁みたいな、、、。」 「哀愁ねえ。」
「私なんてさあ、抱かれたことも無いから体は娘のままなのよ。 あはははは。」 その笑顔がどこか寂しそうに見えるのはなぜだろう?
料理を摘まみながらビールを飲んでいると尚子が俺の隣に座ってきた。 「今夜、いいでしょう?」
肩にもたれてくる尚子の髪を撫でながら俺は危ない夢を見ていた。
店の中は今夜もごった返しているようだ。 テーブル席も埋まっている。
(人気なんだなあ、この店は。) 俺はビールを飲みながらふと尚子の顔を見た。
酔い潰れてしまってすっかり寝込んでいるようだ。 (でもさあ、尚子の家って知らないんだよな。)
まさか、タクシーに頼むわけにもいかず、俺は酔った尚子を連れて部屋へ戻った。
部屋に戻ってきても尚子は夢の中である。 俺はそっと尚子を布団に寝かせて部屋を出た。
(まだ抱かれたことも無いのよ、、、か。 だとしたらまだバージンなのだな?) ふと俺は尚子の顔を覗いた。
50を過ぎたと言っても何処となく少女っぽく見える女だ。 俺は誘惑に襲われて布団に潜り込んだ。
そして彼女を仰向けにして重なった。 康子を抱いた時のように熱い思いが胸を駆け巡っていく。
ワイシャツを脱がして下着を外す。 豊満な胸が現れた。
酔っていても尚子は何かを感じているらしい。 俺は全てを忘れて尚子を抱いた。
メールを開いてみるとこれまたいつものように問い合わせやらクレームやらがランダムに並んでいる。
(いつもと同じだな。 気怠い一週間が始まったのか。) 一通ずつ開いては確認していく。
隣では古参社員の古川直樹さんが週刊誌を読んでいる。 (飽きないなあ。)
隣室は商品開発部。 今日もあれやこれやと喧嘩しているらしい。
「アホの集まりじゃあ使い物にならんなあ。 有難迷惑だ。」 古川さんも俺と同じことを考えていた。
昼になり、外へ出ようとすると会計部の根本かおりが落ち込んだ顔で出てきた。
「どうした?」 「今月は売り上げが上がらないのよ。」
「そう? いい線行ってると思ったんだけどなあ。」 「新商品が売れないのよね。 昔から有る物は売れてるんだけど、、、。」
「だからって今更、新品を引っ込めるわけには、、、。」 「そうなのよねえ。 そこが問題なの。」
「開発部は何か言ってる?」 「まだ話してないのよ。 もめるのは分かってるから。」
「そうだよなあ。 やつらはもめることしか脳が無いから。」 「うーーーん。」
社を出ると俺たちは並んでいつものラーメン屋に入った。 「よし。 塩ラーメンね。」
二人並んで塩ラーメンを食べる。 今日も店は忙しそう。
お盆を持って店員が走り回っている。 調理場のほうは湯気が立ち込めて主人がテボを振っている。
涼子も落ち着かないように見える。 今日も賑やかだねえ。
俺はラーメンを啜りながら康子のことを考えている。 初めて会った時みたいにね。
あの頃は休みのたびに喫茶店に行った。 そしてたまに居酒屋にも、、、。
しかし康子は居酒屋に入ってもウーロン茶を飲んでいた。 「私ね、お酒飲めないのよ。」
そう言いながらウーロン茶を飲むのである。 たまに変わった物を、、、と思ったらカルピスソーダだったりしてね。
たまに酎ハイを勧めたりもしたけれど、飲みたいって言ったことは一度も無かったな。 ぶれない女だった。
そんな康子と結婚したんだ。 「玄関にさあ、鉢植えを置こうよ。」
殺風景な部屋にいろんな飾りを置いていった。 可愛かったねえ。
食堂にも寝室にもぬいぐるみが置かれていたよね。 あいつはいろいろと考えてたんだ。
もちろん、俺は何も言わなかったよ。 康子がやってることだから。
そうやって夜は布団の中で愛し合う。 汗だくにまでなって。
でもとうとう来なかった。 来ないままで俺たちは離婚した。
来なかったからって悔いは残らなかったな。 そんなことも有るさって。
仕事を終えるといつものように俺は一人で部屋へ帰る。 途中まで一緒に帰る人は居るけれど、、、。
「ねえねえ、今夜さあ飲みに行きませんか?」 玄関まで行ったら事務員の山本尚子さんが声を掛けてきた。
この人も五十路のお姉さんだ。 なんだか寂しげな色気を感じる。
「山本さんとかい?」 「私じゃダメ?」
「いやいや、そうでもないんだ。」 「じゃあ行きましょうよ。」
尚子の笑顔に誘われて俺は飲みに行くことにした。 「何処まで行くの?」
「駅前の丸一。」 「えーーーーー!」
「どうしたの?」 「いや、何でもない。」
取り乱す所だった。 丸一はこないだ、康子と飲みに行ったあの店だ。
尚子はどっか楽しそうだ。 確かこの人も結婚してなかったはず、、、。
噂では男っ気がまるで無いと聞いたことも有る。 抱かれたことも無いのかな?
でもさ、そんなことって女には聞けないよなあ。 いくら中年でも無理だよな。
考え事をしていたら丸一に着いてしまった。 「ねえ、入りましょう。」
尚子はさっさと暖簾を潜っていく。 俺は後から付いていくだけ。
「ここがいいわね。」 尚子が座ったのも一番奥のボックスだった。
ボックスに落ち着くと尚子はメニュー表を開いた。 「何飲みますか?」
「俺はビールでいいよ。」 「じゃあ、私もビールにしようっと。」
俺はなぜか緊張している。 康子以外の女性とこの店に来たからか、、、?
「お待ち同様です。 ビールをお持ちしました。」 店員がジョッキを二人の前に置いていく。
「乾杯しましょう。」 平日の夜に女と二人で飲むビール、、、。
俺には意外な気がしている。 今まで無かったんだからね。
確かに社の飲み会で一緒になることは多かったさ。 でも二人きりなんてなあ。
康子以外の女性と飲むなんて考えられなかった。 でも今は尚子が前に居る。
「私ね、キスすらしたことが無いのよ。」 「え?」
「なあに? その驚き用は。 遊んでるように見えてた?」 「遊んでるとは思わないけどさ、、、。」
「でもねえ、私って彼氏も出来ないのよ。 寂しい女でしょう?」 「信じられないなあ。 可愛いのに?」
「女って可愛いだけじゃ無理なのねえ。 何でも出来ないと惚れてくれないみたい。」 「そんなこと無いよ。 チャンスは有るんじゃないの?」
「あなたなんかいいかもねえ。」 「俺?」
尚子は唐揚げを摘まみながら俺の顔を覗くのであった。
「高木さんなんて良さそうだもんねえ。 なんか優しそうだし、、、。」 「でもさ、俺も離婚してるんだよ。」
「だからなおさらに憧れるの。 何って言うのかなあ? 中年の哀愁みたいな、、、。」 「哀愁ねえ。」
「私なんてさあ、抱かれたことも無いから体は娘のままなのよ。 あはははは。」 その笑顔がどこか寂しそうに見えるのはなぜだろう?
料理を摘まみながらビールを飲んでいると尚子が俺の隣に座ってきた。 「今夜、いいでしょう?」
肩にもたれてくる尚子の髪を撫でながら俺は危ない夢を見ていた。
店の中は今夜もごった返しているようだ。 テーブル席も埋まっている。
(人気なんだなあ、この店は。) 俺はビールを飲みながらふと尚子の顔を見た。
酔い潰れてしまってすっかり寝込んでいるようだ。 (でもさあ、尚子の家って知らないんだよな。)
まさか、タクシーに頼むわけにもいかず、俺は酔った尚子を連れて部屋へ戻った。
部屋に戻ってきても尚子は夢の中である。 俺はそっと尚子を布団に寝かせて部屋を出た。
(まだ抱かれたことも無いのよ、、、か。 だとしたらまだバージンなのだな?) ふと俺は尚子の顔を覗いた。
50を過ぎたと言っても何処となく少女っぽく見える女だ。 俺は誘惑に襲われて布団に潜り込んだ。
そして彼女を仰向けにして重なった。 康子を抱いた時のように熱い思いが胸を駆け巡っていく。
ワイシャツを脱がして下着を外す。 豊満な胸が現れた。
酔っていても尚子は何かを感じているらしい。 俺は全てを忘れて尚子を抱いた。