彼に潜む影
◆
基治の退院の日。愛佳が基治を迎えに行くと、病室に彼の姿がなかった。ベッドのシーツは綺麗に整えられていて、そこに基治の形跡はない。
焦った愛佳が病室を飛び出すと、基治の入院中に顔見知りになった看護師とぶつかりかけた。
「すみません」
「あぁ、東郷さんの。退院おめでとうございます」
「ありがとうございます。あの、彼は……」
「東郷さんでしたら、荷物を持って弟さんの病室に行かれましたよ」
「そうでしたか」
基治の居場所がわかってほっとする。
「東郷さんも、ご心配でしょうね。弟さんのこと」
「そうですね……」
「お大事になさってください」
「ありがとうございます」
愛佳は世話になった看護師に頭を下げると、事故の後から未だ眠ったままでいる基治の弟ーー、鷹治の病室へと急いだ。
基治の退院の日。愛佳が基治を迎えに行くと、病室に彼の姿がなかった。ベッドのシーツは綺麗に整えられていて、そこに基治の形跡はない。
焦った愛佳が病室を飛び出すと、基治の入院中に顔見知りになった看護師とぶつかりかけた。
「すみません」
「あぁ、東郷さんの。退院おめでとうございます」
「ありがとうございます。あの、彼は……」
「東郷さんでしたら、荷物を持って弟さんの病室に行かれましたよ」
「そうでしたか」
基治の居場所がわかってほっとする。
「東郷さんも、ご心配でしょうね。弟さんのこと」
「そうですね……」
「お大事になさってください」
「ありがとうございます」
愛佳は世話になった看護師に頭を下げると、事故の後から未だ眠ったままでいる基治の弟ーー、鷹治の病室へと急いだ。