溶けた恋
11
「処女 誘い方」
「女子高生 ラブホ行くのか」
「初エッチ 誘い方」
「初エッチ ラブホ 嫌われる」
「オマエ、とうとうJKにまで進出しとぅのか…」
エイトビートメンバーの大地が、梓馬の携帯の検索履歴を眺めながらつぶやいた。
「ちょっと!なにすんのよ!」
梓馬はオネェ言葉でスマホを奪い取りキッと大地を睨みつけるが、
「いやいや、梓馬がUber頼んでって携帯寄越したんでしょ。」
大地から簡単に論破された。
「うーん、何かな、オレ、どーしよ。シラフでどーやったら女の子誘えるのか分からん…。」
「いや、そこ問題じゃぁなかとよ。そもそもJKとか辞めとけよ?しかも処女?どこで出会ったん?もしやこの前のトー横キッズか?
いかんよ。あいつらメンヘラやし、どっぷり依存された上リスカで脅されとぅ友達とか知っとるし。。やめろ。」
大地からキツく忠告を受けるものの、梓馬の心にはあまり響かなかった。
気がつけば冬子の笑顔から怒った顔、泣き顔が頭をよぎり、一日中冬子の事ばかり考えていたのだ。
「これが恋というものなのかぁ…」と呟いたあと、2人で行ったディズニーの写真などを見て一人でニヤけており、もはや誰も梓馬の世界に入ることができなかった。
夏は完全に終わり、道行くほとんどの人がジャケットなどを着るようになった。冬子はぼちぼち学校へは通っており、最近成績が上がり気味だった。
理由は、梓馬のお陰だった。数学だけは得意だった梓馬は、ネカフェで教えたりして、家庭教師気分を堪能出来るというメリットを享受していた。
まだ、ラブホへは誘えていなかったが。
「梓馬さん、なんで大学やめちゃったの?もったいな。」
「まだ辞めとらんわ。休学中。チャンネル登録増えてきちょるけん、色々計画中や。」
「何、計画って。」
「ひみつ。君は無駄話ばかりせんと集中しなさい。」
冬子は、たまに受ける子ども扱いが気に入らず不貞腐れた。
身体を許したら、、ちょっとは見方変わるのかな?
なんて思う事もあったが、冬子から誘う勇気はないし、梓馬も一回目以来、シラフでホテルへ誘い、断られた時の恥ずかしさがトラウマになったらしく、誘えずに健全なお付き合いを続けていた。
意外とメンタルの弱い梓馬だった。
冬子と梓馬は付き合ってるのか?
リンネの言った通り、梓馬はその辺を明確にする人ではなかったらしく、うまく濁されたままとなり、「オレの彼女」という言葉も聞いたことがなかったので、冬子は「もういいかな」と諦めていた。
それでも、梓馬と過ごす時間が楽しくて、この関係のままでもいいのかもと思っていたのだ。
最近は梓馬と一緒にいる時間が増え、トー横でたむろする頻度が減っており、もう家に帰ろうかなと思っていた矢先、父親からのラインが鳴った。
父は仕事が激務で、海外出張などもあいまって、子ども達が大きくなった今はほとんど家族には関与していなかった。さらに趣味も豊富なので、休みの日は趣味に没頭するため、ほとんど部屋に籠もってたりするのだ。
冬子は身構えた。
あ、、ママからお金恐喝してるの、バレたかな。
「既読」がつかないように通知画面を覗くと、父からは届いたことのないような、馴れ馴れしい文面が、そこにはあった。
「おじさん構文」に冬子は、ぎょっと身構えた。
「アメリカ出張に行った時のお土産買ってきました。♡アメリカはパッションで溢れていて✩まるで史恵みたいに眩しかった!…」
それ以降は開かないと読むことは出来ないものだったが、内容はすぐに察する事ができた。
次の瞬間、すぐにメッセージは消え、続きは読めなくなってしまったが、いわゆる誤爆ラインだ。
冬子は頭が混乱した。
パパって、浮気してたの…?
え、今のって私宛じゃないよねぇ?今となっては続きを読むことが出来ないので、「史恵」という名前の人物と父親がどんな関係なのか知る術もない。
そもそも冬子宛ならば送信取消なんてされるはずがないのだ。
…こんな時はリンネに相談してみよう。
「それはキツいね…。リンネなら父親のそんなライン読んだら、しばらく寝込むわ。。
でもまあ、それだけじゃあ、クロかなんて分からないよ。銀座とかのお姉さんかもしれないし。
お母さんとか、妹とか、大丈夫なん?」
リンネは優しい。こんな賢くて、優しくて、頼りになる友達なかなか居ない。
家族のことなんて忘れて恋愛に突っ走る自分が少し恥ずかしくなった。
「わかんない。妹なんて全然会ってないし、ママとはお金の関係でしかないから。」
「…冬子って凄いよね。案件(パパ活)とかにも手を出さないで、母親恐喝してトー横で生きてる子は、なかなか居ない。尊敬する。」
「そんなことない。リンネみたいに身近で人が死んで家族に振り回されてるのに、こんなに友達思いで優しい子はいないよ。尊敬する。」
2人は見つめ合って、抱き合った。
久々にTikTokでもアップしようか?
2人はスマホのカメラを高台にセットし、照れくさそうにダンスを踊った。
なんでも話して、否定しないで、ディスらないで聞いてくれて、お互いを尊重しあえる関係が最高に楽しかった。
トー横界隈に通ってから、冬子はようやく「自分」というものを見つけた気がしていた。友情、恋愛、思いやり、冬子の今までの人生で枯渇していたものが満たされていく感じがした。
でも、ずっとここで楽しい事ばっかやってられないな。
トー横界隈で自分の居場所にありつけて、しばしその心地よさを堪能した冬子は、少しだけ大人になっていた。
ママ、パパが浮気?とかして辛いんだろうなぁ。。
人生の元凶として憎んでいた母親に対し、同情心すら芽生えたのだ。
梓馬という彼氏?のような人ができ、女心も少しだけ理解出来るようになった冬子は、一度家に帰ろうと、覚悟を決めたのだ。
「女子高生 ラブホ行くのか」
「初エッチ 誘い方」
「初エッチ ラブホ 嫌われる」
「オマエ、とうとうJKにまで進出しとぅのか…」
エイトビートメンバーの大地が、梓馬の携帯の検索履歴を眺めながらつぶやいた。
「ちょっと!なにすんのよ!」
梓馬はオネェ言葉でスマホを奪い取りキッと大地を睨みつけるが、
「いやいや、梓馬がUber頼んでって携帯寄越したんでしょ。」
大地から簡単に論破された。
「うーん、何かな、オレ、どーしよ。シラフでどーやったら女の子誘えるのか分からん…。」
「いや、そこ問題じゃぁなかとよ。そもそもJKとか辞めとけよ?しかも処女?どこで出会ったん?もしやこの前のトー横キッズか?
いかんよ。あいつらメンヘラやし、どっぷり依存された上リスカで脅されとぅ友達とか知っとるし。。やめろ。」
大地からキツく忠告を受けるものの、梓馬の心にはあまり響かなかった。
気がつけば冬子の笑顔から怒った顔、泣き顔が頭をよぎり、一日中冬子の事ばかり考えていたのだ。
「これが恋というものなのかぁ…」と呟いたあと、2人で行ったディズニーの写真などを見て一人でニヤけており、もはや誰も梓馬の世界に入ることができなかった。
夏は完全に終わり、道行くほとんどの人がジャケットなどを着るようになった。冬子はぼちぼち学校へは通っており、最近成績が上がり気味だった。
理由は、梓馬のお陰だった。数学だけは得意だった梓馬は、ネカフェで教えたりして、家庭教師気分を堪能出来るというメリットを享受していた。
まだ、ラブホへは誘えていなかったが。
「梓馬さん、なんで大学やめちゃったの?もったいな。」
「まだ辞めとらんわ。休学中。チャンネル登録増えてきちょるけん、色々計画中や。」
「何、計画って。」
「ひみつ。君は無駄話ばかりせんと集中しなさい。」
冬子は、たまに受ける子ども扱いが気に入らず不貞腐れた。
身体を許したら、、ちょっとは見方変わるのかな?
なんて思う事もあったが、冬子から誘う勇気はないし、梓馬も一回目以来、シラフでホテルへ誘い、断られた時の恥ずかしさがトラウマになったらしく、誘えずに健全なお付き合いを続けていた。
意外とメンタルの弱い梓馬だった。
冬子と梓馬は付き合ってるのか?
リンネの言った通り、梓馬はその辺を明確にする人ではなかったらしく、うまく濁されたままとなり、「オレの彼女」という言葉も聞いたことがなかったので、冬子は「もういいかな」と諦めていた。
それでも、梓馬と過ごす時間が楽しくて、この関係のままでもいいのかもと思っていたのだ。
最近は梓馬と一緒にいる時間が増え、トー横でたむろする頻度が減っており、もう家に帰ろうかなと思っていた矢先、父親からのラインが鳴った。
父は仕事が激務で、海外出張などもあいまって、子ども達が大きくなった今はほとんど家族には関与していなかった。さらに趣味も豊富なので、休みの日は趣味に没頭するため、ほとんど部屋に籠もってたりするのだ。
冬子は身構えた。
あ、、ママからお金恐喝してるの、バレたかな。
「既読」がつかないように通知画面を覗くと、父からは届いたことのないような、馴れ馴れしい文面が、そこにはあった。
「おじさん構文」に冬子は、ぎょっと身構えた。
「アメリカ出張に行った時のお土産買ってきました。♡アメリカはパッションで溢れていて✩まるで史恵みたいに眩しかった!…」
それ以降は開かないと読むことは出来ないものだったが、内容はすぐに察する事ができた。
次の瞬間、すぐにメッセージは消え、続きは読めなくなってしまったが、いわゆる誤爆ラインだ。
冬子は頭が混乱した。
パパって、浮気してたの…?
え、今のって私宛じゃないよねぇ?今となっては続きを読むことが出来ないので、「史恵」という名前の人物と父親がどんな関係なのか知る術もない。
そもそも冬子宛ならば送信取消なんてされるはずがないのだ。
…こんな時はリンネに相談してみよう。
「それはキツいね…。リンネなら父親のそんなライン読んだら、しばらく寝込むわ。。
でもまあ、それだけじゃあ、クロかなんて分からないよ。銀座とかのお姉さんかもしれないし。
お母さんとか、妹とか、大丈夫なん?」
リンネは優しい。こんな賢くて、優しくて、頼りになる友達なかなか居ない。
家族のことなんて忘れて恋愛に突っ走る自分が少し恥ずかしくなった。
「わかんない。妹なんて全然会ってないし、ママとはお金の関係でしかないから。」
「…冬子って凄いよね。案件(パパ活)とかにも手を出さないで、母親恐喝してトー横で生きてる子は、なかなか居ない。尊敬する。」
「そんなことない。リンネみたいに身近で人が死んで家族に振り回されてるのに、こんなに友達思いで優しい子はいないよ。尊敬する。」
2人は見つめ合って、抱き合った。
久々にTikTokでもアップしようか?
2人はスマホのカメラを高台にセットし、照れくさそうにダンスを踊った。
なんでも話して、否定しないで、ディスらないで聞いてくれて、お互いを尊重しあえる関係が最高に楽しかった。
トー横界隈に通ってから、冬子はようやく「自分」というものを見つけた気がしていた。友情、恋愛、思いやり、冬子の今までの人生で枯渇していたものが満たされていく感じがした。
でも、ずっとここで楽しい事ばっかやってられないな。
トー横界隈で自分の居場所にありつけて、しばしその心地よさを堪能した冬子は、少しだけ大人になっていた。
ママ、パパが浮気?とかして辛いんだろうなぁ。。
人生の元凶として憎んでいた母親に対し、同情心すら芽生えたのだ。
梓馬という彼氏?のような人ができ、女心も少しだけ理解出来るようになった冬子は、一度家に帰ろうと、覚悟を決めたのだ。