溶けた恋
21
梓馬が日本を発って、一週間が過ぎた。
エイトビートの企画は、「所持金ゼロ円でタイ横断計画」というスリリングな内容だった。
メンバー全員がタイヘ向うわけではなく、メインで実行するのは、梓馬と櫻井の2名だ。たまに他のメンバーが助け舟として現れるような主旨だという。
「何で梓馬さんがメインなの…?」
リンネの新居にて、ホットコーヒーを飲みながら冬子はこぼした。
「そりゃあねぇ、、梓馬さん度胸あるし、キャラ立ちしてるし、コミュ力高いし、、」
「女のコにもモテるしね!現地でもすぐセフレとか作ってそう!」
梓馬を尊敬しているリンネ彼氏のせつなも加わった。
ああもう、言わないで〜。と頭を抱えると、パシッとリンネの突っ込みが入る。
「ちょっとせつな、そんな事トーコの前で言わないの!!」
「あー、そっかぁ〜、トーコ、ゴメンゴメン!」
2人は相変わらず仲良しだ。
同じ位の時期にトー横広場に来て仲良くなって、その中でも薬物とか暴力事件等の危険な行為は避けながらも一緒にトー横で生きてきた2人は、固い絆で結ばれているようだった。
今月から新居も借りて、新婚夫婦みたい。
あー、羨ましい。。
新居や仕事など、新生活に慌ただしくしているリンネは最近、トー横広場には顔を出さなくなっていた。
私も、前を向いて前進しないと。
梓馬が飛び立ち、リンネも多忙なので、冬子も自然とトー横から足が遠のき、家に帰る頻度が増えていた。
「冬子さん、前期のテストでは赤点取ってしまいましたが、後期は努力されたんですね、一気にここまで伸びる生徒さん、中々居ませんよ。このまま志望の大学目指すのも、十分アリですよ。頑張りましょう。」
最近出席率も高く、クラスでも笑顔が増えた冬子を、担任は面談で褒めちぎった。
先月まで家出していた上、塾も通わなくなり、勉強している姿なんて一切見ていない智子は、冬子の成績アップ
の理由を知る由もなく、ただ笑いながら相づちを打った。
担任から、クラスで笑顔が増えたとは言われたものの、以前に比べればの話で、実際そこまで馴染めてはいなかった。
午前の授業が終わり昼食を済ませた冬子は、自席で陽炎の新曲を聞きながら勉強していると、クラスメイトの琴葉が、冬子の目の前にスマホを差し出した。
「冬子って、地雷系なんでしょ……?」
と探るように言って、キャーと叫びながら教室後方の集団と共に爆笑した。
スマホには、トー横広場であげたTikTokの動画が流れていた。
顔は伏せているが、最近は顔出しなんかもしてたので、バレたのだろう。別にいいけど。
「休みの日はそういう格好してるけど、悪い?」
冬子は喧嘩腰で言い返す。
「え、、ちょっと待って!冬子ヤバい!やっぱ本人なんだ!怖すぎるんですけど!そうすると何?…パパ活とかで生活してたんだよね?キモすぎる!!無理〜!」
琴葉が皆に聞こえるよう大声で話す。
「パパ活」というキーワードに、思春期のクラスメイトの何人かが反応した。
「パパ活…?」
「ヤバいよ、お金貰ってそういう事するの…?」
「キモい、キモすぎる!」
「やっぱ冬子ってそういうオーラある」
「何で学校来始めたの?」
皆ぼそぼそと陰口で話してるのが聞こえてきた。
最近登校する事が増えて注目を浴びているのもあるが、厄介なのは成績が上がった事への妬みだった。
出席率が悪いのにもかかわらず成績を挽回させた冬子に対し、冬子のことを疎ましく思ってるクラスメイトがちらほら居た。
主に、成績を抜かれた生徒たちだ。
チャイムがなり皆大人しく席についた。
社会科の教師が淡々と日本史の授業を行う。
まるでお経のような授業に眠気を催してきたところで、冬子のスマホのバイブが鳴った。
スマホを見ると、クラスの女子だけのグループラインだった。
そこには、地雷系のスタンプとともに、冬子のTikTok動画が貼られている。
琴葉からだ。
その後立て続けに、トー横界隈のディープな記事が3件ほど貼られ、「パパ活は犯罪です」と締めくくられた。
後ろからはクスクス笑い声が聞こえた。
エイトビートの企画は、「所持金ゼロ円でタイ横断計画」というスリリングな内容だった。
メンバー全員がタイヘ向うわけではなく、メインで実行するのは、梓馬と櫻井の2名だ。たまに他のメンバーが助け舟として現れるような主旨だという。
「何で梓馬さんがメインなの…?」
リンネの新居にて、ホットコーヒーを飲みながら冬子はこぼした。
「そりゃあねぇ、、梓馬さん度胸あるし、キャラ立ちしてるし、コミュ力高いし、、」
「女のコにもモテるしね!現地でもすぐセフレとか作ってそう!」
梓馬を尊敬しているリンネ彼氏のせつなも加わった。
ああもう、言わないで〜。と頭を抱えると、パシッとリンネの突っ込みが入る。
「ちょっとせつな、そんな事トーコの前で言わないの!!」
「あー、そっかぁ〜、トーコ、ゴメンゴメン!」
2人は相変わらず仲良しだ。
同じ位の時期にトー横広場に来て仲良くなって、その中でも薬物とか暴力事件等の危険な行為は避けながらも一緒にトー横で生きてきた2人は、固い絆で結ばれているようだった。
今月から新居も借りて、新婚夫婦みたい。
あー、羨ましい。。
新居や仕事など、新生活に慌ただしくしているリンネは最近、トー横広場には顔を出さなくなっていた。
私も、前を向いて前進しないと。
梓馬が飛び立ち、リンネも多忙なので、冬子も自然とトー横から足が遠のき、家に帰る頻度が増えていた。
「冬子さん、前期のテストでは赤点取ってしまいましたが、後期は努力されたんですね、一気にここまで伸びる生徒さん、中々居ませんよ。このまま志望の大学目指すのも、十分アリですよ。頑張りましょう。」
最近出席率も高く、クラスでも笑顔が増えた冬子を、担任は面談で褒めちぎった。
先月まで家出していた上、塾も通わなくなり、勉強している姿なんて一切見ていない智子は、冬子の成績アップ
の理由を知る由もなく、ただ笑いながら相づちを打った。
担任から、クラスで笑顔が増えたとは言われたものの、以前に比べればの話で、実際そこまで馴染めてはいなかった。
午前の授業が終わり昼食を済ませた冬子は、自席で陽炎の新曲を聞きながら勉強していると、クラスメイトの琴葉が、冬子の目の前にスマホを差し出した。
「冬子って、地雷系なんでしょ……?」
と探るように言って、キャーと叫びながら教室後方の集団と共に爆笑した。
スマホには、トー横広場であげたTikTokの動画が流れていた。
顔は伏せているが、最近は顔出しなんかもしてたので、バレたのだろう。別にいいけど。
「休みの日はそういう格好してるけど、悪い?」
冬子は喧嘩腰で言い返す。
「え、、ちょっと待って!冬子ヤバい!やっぱ本人なんだ!怖すぎるんですけど!そうすると何?…パパ活とかで生活してたんだよね?キモすぎる!!無理〜!」
琴葉が皆に聞こえるよう大声で話す。
「パパ活」というキーワードに、思春期のクラスメイトの何人かが反応した。
「パパ活…?」
「ヤバいよ、お金貰ってそういう事するの…?」
「キモい、キモすぎる!」
「やっぱ冬子ってそういうオーラある」
「何で学校来始めたの?」
皆ぼそぼそと陰口で話してるのが聞こえてきた。
最近登校する事が増えて注目を浴びているのもあるが、厄介なのは成績が上がった事への妬みだった。
出席率が悪いのにもかかわらず成績を挽回させた冬子に対し、冬子のことを疎ましく思ってるクラスメイトがちらほら居た。
主に、成績を抜かれた生徒たちだ。
チャイムがなり皆大人しく席についた。
社会科の教師が淡々と日本史の授業を行う。
まるでお経のような授業に眠気を催してきたところで、冬子のスマホのバイブが鳴った。
スマホを見ると、クラスの女子だけのグループラインだった。
そこには、地雷系のスタンプとともに、冬子のTikTok動画が貼られている。
琴葉からだ。
その後立て続けに、トー横界隈のディープな記事が3件ほど貼られ、「パパ活は犯罪です」と締めくくられた。
後ろからはクスクス笑い声が聞こえた。