溶けた恋

24

翌日、梓馬からラインが鳴った。

「冬子元気?オレらこんなんで生活しとるよ!」

櫻井さんと共に路上パフォーマンスを行っている動画だった。周りには結構人が集っていて、どうやら投げ銭でお金を稼いでるようだ。
改めて梓馬の求心力の高さを実感した。

「梓馬さん、凄いね」

とだけ返すと、すかさず
「冬子元気ない?」とラインが来て、返信する前にいつもの如く着信が鳴った。

「もしもし、いつも最初から電話くれればいいのに(笑)」
「冬子、、元気ないなぁと思って心配になっとーよ。」

「ありがと。梓馬さんこそ、お金スられたんでしょ?Twitterで見た。緊急事態じゃん。」

「そーやけん、あの二人組は、多分プロや…、あのデカい胸で男を翻弄して…

いやいや、そんなんはどーでもええねん。」

梓馬は一人突っ込みを入れると、少し間を置き改めて冬子に問いかけた。

「冬子、、何かあったやろ?」

冬子は学校であったこと、家では母親が前と変わらずいい子を押し付けてくること、だから辛くてトー横に居ることをポツポツと話した。

「まあでも、トー横来れば友だちいるし、梓馬さんも企画頑張ってよ!多分、今の梓馬さん私よりお金ないでしょ(笑)」

冬子は梓馬に心配をかけないように、冗談混じりで梓馬を鼻で笑った。



「金、冬子より持っとるよ。オレ、冬子よりも金あるけん、ちょっと今から帰るわ。」




……はい?





またもや想定外の梓馬の発言に冬子は困惑するが、「帰る」と言われ胸が高鳴るのが分かった。


「今から飛行機乗って、今日の夜には日本着くけん、大人しくまっとけよ」


梓馬は決めセリフで締めくくると、早々と電話を切った。

今日の東京は一段と冷え込んでいる。
梓馬さん、あの半袖で来るのかな…?絶対に寒いよなと心配になった。



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