再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています


嘘でしょ⁉ そんな武器持ってたの⁉

男がナイフについているカバーを外した。鋭利な刃物が私に向けられる。

もうだめだと諦めた、そのときだった――。


「――っ」


カランと音がして男が持っていたナイフが床に落ちた。同時に私の目の前から男が消える。


「くそっ。痛ぇな、離せよ」


いや、消えたんじゃなくて男が床に張り付けられている。両腕を背中に括られて頭を押さえつけられていた。


「大人しくしろ」


男を取り押さえているのは加賀美さんだ。

暴れて抵抗する男の身動きを完全に止めている。もう逃げられないと諦めたのか男の動きが大人しくなった。

電話をするためにどこかへ行っていた加賀美さんが戻ってきてくれたのだろう。騒ぎに気付いて男を捕まえてくれたんだ。


「……よかった」


これでもう大丈夫。

加賀美さんを見た瞬間ほっとしてようやく息が吸えた気がした。

そのあとすぐに数名の警備員が駆け付けて、加賀美さんから男の身柄を預かると警備室へと連れて行った。

すぐに警察もくるらしく状況を説明するため加賀美さんも警備室に行ってしまった。

ベンチで待っているように言われたので大人しく座っていると、しばらくして戻ってきた加賀美さんが私の隣に腰を下ろした。

片手で顔を覆って軽く俯く。それから魂まで抜けてしまうのではないかと思うほど重たい溜息を吐き出した。


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