再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
「だ、大丈夫ですか。加賀美さん」
もしかして男を取り押さえるときに怪我でもしたのだろうか。
「――千晶」
顔を覆っていた手が離れて加賀美さんが私を見た。
鋭い表情を向けられて、ビクッと肩が跳ねる。必死で怒りを抑えようとしている、そんな表情。
いつもは〝千晶ちゃん〟と私を呼ぶのに、呼び捨てにされたのも間違いなく彼が今怒っている証拠だ。
「お、怒ってますか?」
「怒ってるよ」
加賀美さんの不機嫌オーラに耐えられずに尋ねると間髪入れずに返された。
やっぱり怒ってるんだ。
「どうして俺が今怒っているかわかる?」
加賀美さんが怒っている理由……。
「わからないです」
思い当たる節がなかった。
むしろ私はよくやったと思う。結果的に犯人を捕まえたのは加賀美さんだけど、その逃走を止めるきっかけを作ったのは私なのだから。
怒られるんじゃなくて〝よくやったな〟と、褒めてもらえると思っていた。
「わからないのか」
加賀美さんがすっと立ち上がる。
「今日はもう帰ろう」
「でも映画は?」
「ごめん。そんな気分じゃない」
珍しく冷たい声で答えて、加賀美さんが足早に歩き出した。