再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
このあとは映画を観る予定だったのに。
でも今のピリピリとした雰囲気を纏う加賀美さんになにも言うことができず、私は黙って彼のあとを追いかけた。
駐車場に停めてある車に乗り込み、自宅マンションへと向かう車内も私たちに会話はない。
シンとした静けさに気まずさを感じる。加賀美さんと一緒にいてこんなことを思ったのは初めてだった。
ひと言も話さないままマンションに到着。
いつもは私のペースに合わせてゆっくりと歩いてくれるのに今の加賀美さんは急ぎ足で進んでいく。置いていかれないように必死についていき、エレベーターに乗った。
居住階で降りると共同廊下を進み自宅へと向かう。
鍵を差し込んで扉を開けた加賀美さんに軽く背中を押されて玄関に入った。そのあとに入ってきた彼に突然、背中からぎゅっと抱き締められた。
「加賀美さん?」
彼の腕に力がこもる。
後ろから私の首筋に顔を埋めた加賀美さんから弱々しい声が聞こえた。
「あんなことはもう絶対にやめてくれ」
その言葉と私を抱き締める行動でようやく加賀美さんが怒っている理由に気が付いた。
彼は私を心配していたのだ。
さっきは自分のことを〝よくやった〟と思った。でも、よく考えるととても危険な行為だったのではと思えてくる。
あの男はナイフを持っていた。一歩間違えれば刺されていたかもしれない。
今になって自分の行動がいかに無謀であったかに気付かされた。