再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています


午後十時半には店を出て及川と共にマンションに帰宅。

それぞれの階で別れてから自宅の扉を開けた。

玄関にある千晶ちゃんの靴を見てほっと胸を撫で下ろす。

今日も無事に俺の家に帰ってきている。毎日それを確認するたびに安堵しているが、今日はさらにその思いが強い。


『なにかの事件に巻き込まれていないといいけど』


及川の言葉のせいかもしれない。

ふと思い出すのはこの間の商業施設での一件。

窃盗犯に出くわして、逃走を止めなければと思う人はいるかもしれない。でも実際に行動に移す人はあまりいないはずだ。

でも千晶ちゃんはそれをしてしまうのだから、父親である佐波さんに似て彼女の正義感は人一倍強いのだろう。

もしも似たようなことを過去にもしていたら?

なにかの犯罪を目の当たりにして、千晶ちゃんが犯人を捕まえようと行動を起こしていたとして。それを逆恨みされて、今回の尾行に繋がっている可能性もある。

しかも彼女のあとをつけているのは個人ではなく、おそらく組織的なもの。

ますます不安が募る。


「おかえりなさい、加賀美さん」


リビングに入ると、まだ起きている千晶ちゃんが駆け寄ってきた。


「ただいま」


思わずその体を強く引き寄せていた。

お風呂上りなのだろうか。彼女からは俺が使っているものと同じシャンプーの香りがして独占欲が満たされる。


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