再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
そんな俺の願いは通じず、千晶ちゃんが投げたショルダーバッグは逃走する犯人を見事に足止めして、犯人はその場に転倒した。
盗んだバッグが犯人の手から離れて、千晶ちゃんがすぐにキャッチする。それに激怒した犯人が刃物をちらつかせながら千晶ちゃんに襲いかかろうとしているのがわかった瞬間、彼女を失うかもしれないという恐怖が全身を襲った。
急いで駆け寄り、犯人の手から刃物を奪うと床にねじ伏せて取り押さえた。
俺が来るのがあと少し遅かったら……。
あの刃物が千晶ちゃんを傷つけていたかもしれない。
今まで生きてきた中であのときほど恐怖を感じたことはなかった。
頼むからもう二度とあんな真似はしないでほしい。あの事件のあと映画も観ずに帰宅して真っ先に伝えた俺の本音。
盗まれたバッグも現金も中身もどうにでもなる。
そう思っていたが、後日その考えが間違いだったことに気付いた。
千晶ちゃんが窃盗犯から取り返したバッグは被害女性の息子が初めての給料で買ってくれたものだったらしい。
代わりなんかない大切なバッグを守ってくれた千晶ちゃんにお礼を伝えたいからと手紙が届いたのが数日前のこと。
そこには便箋数枚に渡って千晶ちゃんへのお礼の言葉がびっしりと綴られていた。