再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
もしかしたら四月に病室を訪れたときの父の言葉を気にしているのかもしれない。
私の結婚相手に厳しい条件をつけて『お前に娘はやらん』と追い返したいと話していた父を思い出す。
「結婚の挨拶じゃないからそこまで重く考えなくても大丈夫だよ」
英介さんと恋人関係になったことを父にはまだ伝えていない。
私としてはわざわざ報告する必要はないと思ったが、英介さんは父にしっかりと許しをもらいたいそうだ。
でも、こんなに緊張するくらいならやっぱり言わなくてもいいのに。
「俺は千晶との結婚も考えてるよ。佐波さんには結婚を前提とした交際の許しをもらうつもりだから」
「えっ」
病院に到着して、駐車場に車を停めている英介さんの横顔を見つめる。
私たちはまだ付き合ったばかりだ。それなのに彼はすでに結婚も視野に入れていることを初めて知った。
もちろん私も同じ気持ちでいる。でも、突然のことにどんな言葉を返せばいいのかわからない。
しどろもどろになっている私に気付いた英介さんがくすっと笑う。
「プロポーズはまた今度ちゃんとするから返事はそのときでいいよ。今は俺が千晶との結婚を考えているってことだけ頭の片隅に入れておいて」
車を停めた英介さんの手がハンドルから離れて私の頭に触れた。そのままくしゃりと髪を撫でられる。
その手が頬に滑り落ちて私の顔を少し上に向けると、運転席から身を乗り出した英介さんが顔を寄せてくる。
あっという間に唇を塞がれ、ちゅっというリップ音をたてて離れていった。