再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
しばらくすると父から深い溜息が聞こえて、私たちはふたり同時に頭を上げた。
「加賀美くん。俺が聞きたいのはそういうのじゃないんだよ」
腕組みをしたまま父が首を大きく横に振る。その表情には先ほどまでの険しさはなく、どこかいじけたように英介さんを見つめていた。
「前に加賀美くんの前でも話したじゃないか。俺が聞きたいのは『娘さんを僕にください』っていうセリフだ」
「へ?」
思わず間抜けな声が出てしまった。
すると加賀美さんがぷっと噴き出す。
「佐波さん。それは結婚の挨拶のときでしょ。今は交際の許しをもらうための挨拶だから、俺はあえてそのセリフは言わずに取っておいたんですよ」
「でもやっぱり今すぐ聞きたいじゃないか。で、『お前に娘はやらん』って言い返したかったんだが」
「それで俺のことを追い返すんですよね」
「当たり前だろう。そこまでがセットで俺のやりたいことなんだからちゃんとやってくれないとだめじゃないか加賀美くん」
「わかりました。じゃあ結婚の挨拶のときにそれをセットでやりましょう」
「約束だからな」
さっきまでのピリピリとした雰囲気が一瞬で吹き飛んだ。
突然いつものように和やかに話し始めた父と英介さんを交互に見つめる。
どうやら私だけがこの状況をうまく呑み込めていないらしい。