再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
きっと英介さんはいい父親になると思う。
彼の性格や育った環境を思うと絶対そうに決まっている。
だからこそ私は自分に自信がなくなる。
仕事中だというのに悶々とそんなことを考え込んでいた。すると静かなオフィスに電話の鳴る音が響く。
ハッと意識を取り戻した私はふるふると頭を振って鬱々な考えを振り払った。
今は仕事に集中しないと――。
定時で仕事を終えて会社を出ると電車に乗ってマンションの最寄駅で降りた。
夕方になっても暑さは衰えることなく、吹く風も生ぬるい。
額にうっすらと汗を滲ませながら人通りの多い表通りを歩く。
交差点の歩行者信号が赤に変わって足を止めた。バッグからハンカチを取り出して額や首筋の汗を拭っていると、後ろから肩をぽんと叩かれる。
誰だろう?
振り返るとスーツを着た男の人が立っていた。
「突然すみません。佐波千晶さんですよね」
「えっ……、はい」
旧姓で呼ばれたけれど頷いた。
英介さんと結婚をしたので私の名字は変わっている。でも私に声を掛けてきた男性はそれを知らないのかもしれない。
というよりもこの人は誰?
話しかけてきたのだから男性は私を知っているのだろうけど、申し訳ないが私はまったく見覚えがない。
すると男性が私に一歩詰め寄った。