再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
「――……千晶、大丈夫?」
ふわっと意識が浮上する。
気が付くと私の目からは涙がこぼれていて、英介さんが心配そうに顔を覗き込んでいた。
「夢、か……」
ぼんやりと辺りを見回して、ここが寝室のベッドだと気付く。
室内はまだ暗くて朝はきていないようだ。
「うなされていたけど、こわい夢でも見たのか」
隣に眠る私を英介さんが自分の方へと引き寄せる。彼の胸に顔を寄せてぎゅっと服にしがみついた。
「お母さんが家を出ていったときの夢を久しぶりに見た」
当時は繰り返して見ていたが、母がいない生活が少しずつ当たり前になってくるとその頻度も減り、小学校高学年になるとすっかり見なくなった。
同時に母を思い出すこともなくなっていた。
久しぶりに母に捨てられた日の夢を見たのはやはりあの出来事が原因だろう。
数日前、母の秘書だと名乗る男性ふたりと話をした。彼らは四カ月ほど前から私のことを調べて、あとをつけていたそうだ。
父と離婚をして家を出ていった母が会社を立ち上げたことは噂で聞いたことがあった。社名ももちろん知っていた。
でも、私と父を捨てた人のことなんてまったく興味がなかった。