再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
フローリングの床には名刺も落ちていて、それを手に取る。
株式会社YUKISHIROと社名が載っているこの名刺は母の秘書のものだ。母には会わないときっぱり伝えたが、もしも気持ちが変わったら連絡してほしいと名刺を渡された。
すぐにでも破こうとして思いとどまり、名刺をバッグに入れたままだったのを思い出した。
今度こそ捨てようとしたが破ることができない。
もしかしたら連絡をするときがくるかもしれない。心の片隅にそんな思いがあるから捨てられないのかも。
母には会いたくない。でも会って聞いてみたいことがある。
あの日どうして私を置いていったのか。その理由を母の口から聞きたい。
そのとき、床に落ちたままのスマートフォンがぶるっと振動した。英介さんからメッセージが届いたようだ。
仕事終わりに人と会う約束があるから帰宅が遅くなるらしい。食事は取らないので、夕食は帰ってから食べるそうだ。
誰と会うのだろう。
食事はしないということは少しだけ会って別れる予定なのかもしれない。仕事関係の人か、友人かな。
バッグの中身をすべて拾い集めてから夕食の支度に取り掛かった。