再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
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病室の南側にある窓からは明るい日差しが差し込んでいる。
眼下に見える中庭の木々は数日前まではピンク色の花弁を残していたのに、いつの間にかほとんどが散って新緑の芽が出始めていた。
今年はお花見に行けなかったなあ……。
毎年お弁当を持って近所の公園に桜を見に行くのを楽しみにしていたけれど、今年はそれどころではなかったのだ。
「――花の命は短くて……」
背後から聞こえた弱々しい声に気付いて、視線を中庭から病室に戻す。
真っ白なベッドに座るパジャマ姿の父が、先ほどまでの私と同じように窓の外を見つめていた。
背中を丸めてしゅんとした表情を見せる父の姿に胸が締め付けられるように切なくなる。
土曜日の午後二時。私――佐波千晶は入院中の父のお見舞いに来ていた。
「お父さん元気出して」
努めて明るい声を出して笑顔を作る。
「この前の説明で手術をすれば治るって先生が言ってたでしょ。だから大丈夫だよ」
父の隣に腰を下ろして、しょんぼりと丸まった背中に手を添えた。励ますように優しく撫でても父の表情はどんよりと曇ったまま。
「手術をしたところでどうせもう手遅れだ。先生はああ言ってるが本当のところ父さんはもう助からないんだろ」
「そんなことないよ。お父さんの病気は治るんだって」
「千晶も父さんに嘘をつくなら、今日はもう帰ってくれないか」
「お父さん……」
すっかり弱気な父にこれ以上どう声をかけていいのかわからず口をつぐんだ。