再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています


「千晶ちゃんだってかわいいのに彼氏がいないなんて信じられないな」

「かっ……」


かわいい? 私が?

お世辞だとわかっていてもドキッとした。

動揺してしまいそのあとの言葉が出てこない。

それからしばらくは会話が途切れて、車内にはラジオが響いている。おすすめの飲食店を紹介する女性パーソナリティの声をぼんやりと聞いていた。


「千晶ちゃんちって次の信号を右に曲がった方が近道だよね」


父が入院している病院の最寄駅に新しくできたという日本初上陸のスイーツ店の紹介に耳を傾けていると、加賀美さんに声を掛けられた。

ナビでは信号を越えてまっすぐの道を通そうとしているが、加賀美さんの言う通り右に曲がった方が近道だ。


「はい。右の方が近いです」

「じゃあそっちから行くか」


しばらく進み交差点で車を停めたあと、向かいから走ってくる車が途切れたところで加賀美さんはハンドルを切って右に曲がった。

あと十分もすれば自宅に着く。


「千晶ちゃんは彼氏ほしいって思わないの?」


飲食店紹介のコーナーが終わり、話題のドラマ主題歌が流れる車内で加賀美さんの声が聞こえた。


「彼氏ですか?」

「そう。いたことないって言ってたけどほしいと思わなかったのかなって」


今日の加賀美さんは私と恋愛トークがしたい気分なのかな。さっきから彼氏について聞かれるけれど。



< 20 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop