再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
彼氏かぁ……。
自然と目線が落ちて、膝の上に置いた両手に力が入る。
「私、彼氏を作ることにずっと消極的だったんです」
「どうして?」
「それは……ちょっといろいろあって」
ごまかすように笑顔を作った。
意味もなく消極的だったわけじゃない。ちゃんとした理由があるけど、今それを加賀美さんに打ち明けるべきじゃない。
それに消極的だったのはついさっきまでだ。
「だけど今はけっこう前向きになっています」
「彼氏がほしいってこと?」
「はい。父が元気なうちに結婚したいなって思って」
「それは、千晶ちゃんとバージンロードを歩きたいっていう佐波さんの夢を叶えるため?」
「はい」
私には彼氏を作れない理由がある。
高校生のときに起きたとある出来事がきっかけでトラウマを負ってしまい、男の人に触ったり触られたりするのがこわい。
彼氏と手を繋いだり、抱き締め合ったり、キスをしたり、体を重ねたりといった行為が私には無理。相手の男性を受け入れることができないのだから私は彼氏を作れない。
だからそういったことを今まで遠ざけて生きてきた。