再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
もしかするとあの男はマンションの住人の知り合いで、私ではない誰かの帰りをあの場所で待っているだけかもしれない。
でも身を隠すようにしてエントランスの様子を窺っている男の行動はどう見ても不自然だ。
やっぱり私の帰りを待ち伏せしているのだろうか。
「佐波さんが家にいてくれたら安心して千晶ちゃんを任せられるけど、今は入院中だからな。このまま千晶ちゃんをひとりにするのが心配だから、念のため今日は家に帰るのはやめようか」
加賀美さんが車のエンジンをかける。ゆっくりと動き出して駐車場を出た。
植え込み当たりにいる男をこっそりと見たけれど、エントランスを気にしているようでこちらには気付いていないようだった。
車は来た道を戻っていく。
家に帰れなくなってしまったが、これからどうすればいいのだろう。
「このまま俺の家に行くけどいいかな」
「えっ」
ぱっと振り向いて、運転席に座る加賀美さんの横顔を見つめる。
「加賀美さんの家ですか?」
「そう。とりあえず今夜は俺の家においで」
「でも、ご迷惑では……」
「迷惑なんかじゃないよ。むしろ俺が心配だからそうしてほしい」
本当にいいのだろうか。
だけど他に行く場所もないし、待ち伏せされているかもしれない家に帰るのもこわい。
どこか安いホテルに泊まる手もあるけれど、もしかしたら誰かにあとをつけられているかもしれない今はひとりになりたくなかった。
加賀美さんのそばにいるのが一番安全なのかもしれない。