再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
両親は私が七歳の頃に離婚をしている。
そのときに父が母の写っている写真をすべて捨ててしまったので、私には母の思い出がない。
父が美人だと言っていた母の顔も思い出すことができない。いつも靄がかかったようにぼんやりとしか母の姿が浮かんでこないのだ。
「着いたよ」
いつの間にか自宅マンションに到着していた。
駐車場に車を停めた加賀美さんが、車内からエントランスやマンション周辺に目を走らせる。
「大丈夫そうだな。でも心配だから俺もついてく」
見た限り昨日の男たちの姿はなさそうで、ほっと胸を撫で下ろした。
加賀美さんに玄関までついてきてもらい、家の中に入った私は必要最低限のものだけをバッグに詰め込んだ。
駐車場に戻り、再び車に乗り込む。もうすぐ正午なので加賀美さんの自宅に戻る前に昼食を取ることにした。
駅の近くのコインパーキングに車を停めてから、飲食店が並ぶエリアに歩いて向かう。
その途中にある広場の遊歩道を進んでいると、小学校高学年くらいの男の子ふたりが高い木の下で手を伸ばしながらぴょんぴょんと飛び跳ねているのが見えた。
なにかを必死に取ろうとしているようだ。
周囲を歩く人たちはそんな男の子たちを横目に見るだけで通り過ぎていく。けれど加賀美さんは違った。